怪文庫

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ベッドの下

皆さんは「ベッドの下の男」という都市伝説を聞いたことがあるだろうか?

ある女が友達の家に遊びに行き、そのまま流れで泊まっていくことになった。

二段ベッドの下の段に女、上の段に友達が寝ることとなったが、いざ寝るという段階になって女が突然「お腹すいた。今からコンビニ行こう。」と言い出した。

すでに夜も更けていて、出かけるにはあまりにも不自然な時間だった。

明日にしようと友達はやんわりとたしなめるが、女は今から行こうと言って聞かない。結局友達の方が根負けし、二人で出かけることになった。

しかし家を出た直後、女は突然震え出した。何があったのかと尋ねる友達に女は返す。

「ベッドの下に斧を持った男が潜んでいた。助けを呼びたかったが男に気づかれるのが怖かったので、コンビニに行くふりをして連れ出した。」

結局その後二人が警察を読んだことで男は逮捕され、一件落着となった。

 

そしてこの都市伝説が世間に浸透して久しくなった頃、その続きとも言える物語が生まれることとなった。

主人公はある女子大生。バイトを終え遅くなった時間に友人に電話し、今から遊びに行きたいと交渉していた。

自分と同じく就職活動中だったからなのか、友人は随分と遊びにくることを渋っていた。

それでも女子大生は粘り続け、最後には遊びに行くだけではなく泊まっていく約束まで取り付けた。

乗り気ではなかった友人だが、いざ二人で酒を飲み始めるとエンジンがかかってきたようで、二人で大いに盛り上がった。

 

女子大生はその流れで、件のベッドの下の男の都市伝説を友人に聞かせた。もともと友人はこのようなオカルト系の話には疎く、少し話が進むたびにあからさまに怖がったり、怖いと漏らしたりしていた。

クライマックスで女子大生が「ベッドの下に誰かいないか確かめてみる」と言い出した時には、近所のこともはばからずに大声で悲鳴をあげたほどである。

 

あまりの怖がり方に結局話は打ち止めとなったが、友人のリアクションに味をしめた女子大生は、またどこかでドッキリのようなことを仕掛けてやろうと思いたち、友人がコンビニに行くと言って席を外したタイミングで、実際にベッドの下を覗き込んでみた。

もちろんそこに男など潜んではいない。そこには大きなサイズの茶封筒があるだけだった。気になった女子大生はその茶封筒を引っ張り出し、中身を取り出して見た。

そしてその直後、彼女の顔は曇ることとなる。

 

そこに収められていたのは、探偵会社からの調査報告書だったのである。

なぜこのようなものが友人の家に?そう思いさらに中を覗いてみるとますます彼女は怪訝な顔を浮かべることとなった。

その報告書の内容というのは、ある人物の素行調査の結果を示したものだった。

生年月日、住所、勤務先などの基本情報は勿論、勤務時間や休日の過ごし方のような細かい部分まで詳細に調べられている。

そしてその情報が示すのは、調査対象になっているのは他でもない自分自身だったということだった。

普段仲が良かったはずの友人は、探偵会社に依頼して自分の周りを調査させていたのだ。

読めば読むほど意味がわからなくなる女子大生だったが、考えていくうちに少しずつ思い当たる節があることに気づいていった。

最近いたずら電話が増えたこと、やたら周囲から視線を感じるようになったこと、やたら見覚えのある景色の写真が郵便受けに入れられるようになったこと。

今日も友人の家に行こうと思い至ったのは、そんな不審な出来事が続き落ち気味だった気分を、少しでも持ち直したいと思ったからだった。

まさか今までのは?そう思い視線を逸らしたその時、友人の写真たての裏にもう一枚、小さな茶封筒が立てかけてあることに気づいた。

 

怖いのに見ずにはいられない。そんな矛盾した思いを抱きながら彼女は中身を改める。

そこに収められていたのは写真だった。家に入る自分、着替えをする自分、入浴する自分。そしてその写真の裏には、自分の携帯番号とSNSのアカウントが記載されていた。

身の毛がよだったその時、友人が帰宅する。

怯える彼女を見た友人はこともなげに「あ、見た?」と言い放った。

言葉を失う彼女に友人は続ける。

「あんたさ、あたしと就活で受ける企業モロかぶりなんだもん。しかもあたしが狙ってたり、倍率低いところばっかり。いい加減邪魔だったんだよね。だから嫌がらせで追い詰めて就活できなくしてやろうと思ったの。」

無邪気とさえ言える調子で淡々と語る友人に、彼女は改めて戦慄する。

「ごめん、あたしもう帰るから…」と震えながらいう彼女に友人は、

「何言ってんの?帰すわけないじゃん。こんなもん見られたんだよ。あんたがベッドの下の男とか言い出した時点でやばいと思ったから、道具も揃えてきたんだよ。」と言い、手に持っていたビニール袋の中身を取り出して見せる。

大きなハサミに包丁、果てはノコギリまで、何をするつもりなのか容易に想像できた。

「やっぱりベッドの下見られちゃったね。都市伝説みたいに気づかないふりしてればよかったのにね」

 

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