怪文庫

怪文庫では、多数の怖い話や不思議な話を掲載致しております。また怪文庫では随時「怖い話」を募集致しております。洒落にならない怖い話や呪いや呪物に関する話など、背筋が凍るような物語をほぼ毎日更新致しております。すぐに読める短編、読みやすい長編が多数ございますのでお気軽にご覧ください。

怪文庫

ドッペルゲンガー

ずいぶん昔から、自分自身にそっくりな人間がこの世の中には3人はいると言われています。そしてそのそっくりの人間とは過去からタイムトリップしたもの、未来からタイムスリップしたもの、または自らが何らかの意思で別人の意思を持ち具現化したもの等と言う都市伝説がまことしやかに囁かれているのは聞いたことがある方も多いでしょう。

 

しかしながら、自分自身にそっくりな誰かとある場所で出会った方はどれだけいるでしょうか。これもまことしやかに囁かれている伝説としては、自分自身にそっくりな誰かにあった場合、命を失ってしまうと言うものです。

 

私自身、昔から不思議な位、夢で見た風景を現実で出会ってみたり、全く関係のない場所で友人と街中で出会ってしまったり、思いがけない予測が当たってしまうことがあるなどなかなか他人には理解できないような体験を過去からしてきました。

 

もちろん、誰かに打ち明けようと考えたこともありますがこんな話をしても誰も信じてくれないからです。

しかし、このような話を本当に打ち明けられる、さらには一緒に体感する人間が出てきたのでカミングアウトをするようになりました。それは、結婚した家内とのことです。

 

一緒にいる時間が長い以上は、私自身が違和感が思ったことを事前に伝え、それが事実であることを何度も彼女自身と一緒に体感をしてきました。最初は気味悪がっていましたが、私自身が間が良かったり少し人より敏感な人間だと言う事位で片付けられていたのです。それでもやはり最初は本当に不思議がっていました。 

 

そして、まさかの出来事が起こったのは数年前のことです。さすがに偶然の出会い、私自身が勘が良いと言う事は家内とも共通の理解でした。

 

ある時、私自身が家内と待ち合わせをしていた時です。私が少し遅れて行ったので、少し遅れる旨の連絡をしたところ、なんと家内から今あなたと一緒にいるわよと言うのです。

この時はさすがに私も驚きました。実際の距離としては電車で言うと2駅分を離れているわけです。そして、家内が驚いて一緒にいると言う私を確認しようとすると消えていたそうです。その時はさすがに家内も恐ろしくなったらしく、一緒にいた私と言う人物を確認するに至っても、会話もしたし、どう考えても私だったと言うわけです。

 

その日は、家内も相当動揺してしまい、一緒に出かけることもなくそのまま自宅に帰ることにしました。

この時に初めて私自身が昔に感じていた違和感を確信したのです。私は実は過去から何度か、私とそっくりな人物に会ったことがあるのです。これを認めてしまうと私自身が死んでしまうからと言うことであえて認める事はしませんでした。どう考えても、私としてはこれは嘘ではないと言いながらも誰もが認めてくれるわけではないのでいうことがなかったのです。

 

しかしながら、まさか自分以外の人物が自分とそっくりな人間に出会ってしまうことが起ころうとも思いもしませんでした。家内によると、どう考えても私とそっくりだったのですが、違和感があるとすれば少し無表情だったと言うことです。受け答えもあまりすることなく、機嫌が悪いのかと思っていたと言うことです。

 

さらに、決定的な出来事がやってきます。ある日1人で公園を散歩していたときのこと。朝からなんとなくざわざわと言う気分はしていましたが、目の前から私とそっくりな人間が歩いてくるではないですか。それも、何の違和感もなく、ニヤリと笑うこともなく私に近づいてきます。

 

私はあまりの違和感におののきながらも、ここで自分とそっくりな人物に対して背を向けることによってさらなる後悔を生むのではないかと言う強い意志も同時に持ち合わせていました。

 

最初は30メートルあった距離が少しずつ狭まってきます。この時間がどれだけ長いものだったか。今でも恐ろしい、震えるような感覚を忘れることもできません。そして10メートル、5メートル、3メートルと近づき、すれ違うかどうかと言うタイミングの時、なんと自分とそっくりの人物が私と重なったのです。

 

感覚的には透明人間が自分とすれ違うかのように。私自身驚いてさすがに振り返ったのですが私とそっくりの人物はそこにはいません。本当に私と重なってしまったのです。 

 

この不思議な風景を見て周りの方々はどう思っているのか、気になりましたが気づいている様子もありません。不思議な現象は誰にも見えず、自覚しているのも私だけだったのです。 

 

もしかすると心霊に憑依されたのではないかと言う思いもありましたが、特に気分があらぶることもなく、気分が悪くなることもありません。本当に自分自身にそっくりな人物が一体化した、ただそれだけなのです。そして、古くからの伝説の通り、これは私の死を予兆しているのではないかと言う恐怖に襲われました。

 

あれから5年。不思議なことに自分自身にそっくりな人物と出会う事は一切なくなりました。そしていまだに私は健康な生活を送っています。 

 

これからも自分自身にそっくりな人物と出会うことがあるのでしょうか。あの恐怖がまた自分を襲うかと思うと自分自身の境遇を呪わざるをえません。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter