怪文庫

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三叉路にいた導祖神

3年くらい前のことを今更思い出したんだけど、私の通勤路に導祖神があった。

 

うちはそこそこ田舎だけど、自治体が都市開発に精を出してる地域で、あっちこっちで工事をしていた。その通勤路の途中にもう使われてない畑を挟んだ三叉路があって、片方は駅に向かう道で、片方は住宅街に続く道。

 

ある日定時退勤できて、いつもは営業時間終わって閉まっちゃってるパン屋さんに寄れたから、ご機嫌で帰ってたの。

 

まだ空が明るくて、ちょっと暑いけど気持ちがいい風が吹いてて。ほら、明るいうちの退勤とかお風呂って得した気分になるじゃん。ほんと私もご機嫌で、普段は全く気にしてなかったのに件の導祖神通りかかったときに、気まぐれでロールパン二つ導祖神にお供えして帰った。

 

まあ、ちょっと進んでから振り返ってみたら秒でカラスがロールパン強奪してたんだけど…。それはまあ、そりゃそうかって帰って、いつもよりまったりしてから寝たの。その日はそれだけ。

 

でもその週末に変な夢を見た。

 

ゴザの上に石が置いてあって、よく見ると頭だった。石の頭。なんでかすぐに、あそこの導祖神の首だってわかって、なんで首だけなんだって思ったけど、私はなぜかロールパンを持っていて「あっ、これお供えしなきゃ」って思ってお供えした。ってところで目が覚めた。

 

わけわかんないでしょ。朝ごはん食べながら傘地蔵的な?って思ったけどなんももらってないし、むしろまたロールパンあげてるし…。

 

変な夢って思って出勤するべく道を歩いてたら、導祖神がなくなってた。

 

オカルト的なやつじゃなくてなんか工事の跡っぽいのがあって、どかしたんだなってわかるんだけど、導祖神てどかしていいの?だめじゃない?って思って怖かった。

 

結局そこは道の拡張と、畑だったところを商業店舗にして風景がガラッと変わったんだけど、その三叉路は事故が多くなった。

 

道が拡張したことで車の通りが激しくなったことと、そのことについていけないお年寄りがつい飛び出して、、、なんてことが多かった。今のところ死亡事故は聞いてないけど、新しく立った店舗に車が突っ込んだこともあった。

 

しかもその商業店舗、いろんなお店が入れ替わり立ち替わりで、2・3ヶ月でお店が変わる。一番短いときは、新しいお店の工事中に一瞬カラになってまた全然違うお店の準備が始まってた。たとえば、美容院の準備なんだなって思ってたところに次見たときにはラーメン屋の準備が始まってるみたいな。

 

件の道祖神がどうなったのかはわからない。井戸端会議してるおばちゃんたちの話では移設されたとも廃棄されたとも聞く。でもみんな口を揃えて言う。

 

「あの三叉路は呪われた」

 

正直、私もそれが出鱈目とは思えなくて、気味が悪くてちょっと遠回りだけど通勤路を変えた。

 

夢に道祖神を見た意味は今でもわからない。

 

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