怪文庫

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揺れる土地

私の実家の町内に、一見するとどこにでもあるような普通の空き地がありました。

 

管理が行き届いておらず雑草は子供の背丈ほど伸び荒れていて左奥に3m程の木が一本立っていました。

 

入り口にはロープが張ってあって立ち入り禁止になっていました。

 

私が小学生のころ友人から「あそこに入るとね、じしんがくるんだって」と言う話を聞かされました。

 

信じ込みやすい性格だった私はすぐにその話を信じて、以後そこを通る際はなんだか不気味な気配がするようで一人の時は足早に通り過ぎていたのを思い出します。

 

中学生になった頃、今度は別の友人と2人で帰宅途中、その空き地の前を通り過ぎようとしたときに友人が

 

「ここの空き地ってさ変な噂あるの知ってる?」と聞くので「入ると地震がおきるとか言うやつ?」と聞き返しました。

 

「そうなんだけど、地震っていうかさ、ここだけがなんでか揺れるんだって。先輩から、入った友達がホントに揺れた!ってパニックになってたらしいって聞いた。

 

あそこ心霊スポットになっててさ、よく男子とか行ってきたとか自慢してる。でも何も起きなかったって言う人と揺れたっていう人がいるみたいで気持ち悪いよねー」

 

なんて話をしながら通り過ぎました。

 

ある日学校の帰りに一人でその空き地の前を通ったとき、一人の小学3年生くらいの男の子がランドセルを背負ったままロープの下をくぐって空き地へ入っていくところをみかけました。

 

危ないし変な噂も聞いていたので心配になって出てくるまでなんとなく空き地の前に立っていると、10分くらいしてその男の子が草を分けながら出てきた。

 

目が合ったので「あぶないよ」と注意しようと思ったのです。

 

しかし先に男の子の方から「今日はゆれた!」と声をあげたので拍子抜けしてしまいまいた。

 

「揺れたって、空き地の中?」

 

「そうだよ」確かに自分はここに立っている間揺れるような感覚は無かったのであの噂を思い出しました。

 

「空き地だけが揺れるんだって」

 

そして男の子は得意げに「誰か死ぬんだ」と言いました。

 

「ぼく発見したんだ!この空き地がゆれるとね、誰か死ぬんだよ」

 

「ええ?!」変な声がでて友人から聞いた噂話や誰かが死ぬという男の子の話がぐるぐると頭をめぐって心臓の音がバクバクなってるのを感じました。

 

「死ぬって誰?」「わかんない」「いつ?」「しらない」あっさりと答えて男の子は歩き出してしまいました。

 

ただ茫然とその姿をみつめながら私はしばらく立ち尽くしてしまいました。

 

翌日になって家でも学校でも誰か亡くなったという知らせが無いか慎重にチェックしていましたが特に何も起きる事無く、あっても事故でケガをしたとかひったくりにあったとか日々よく聞くような話しか目にしませんでした。

 

まだ低学年のようだったしふざけていたか、ただの遊びだったのかもしれないじゃないかと、馬鹿馬鹿しくなり、すぐ男の子の事が記憶から遠ざかって薄くなっていきました。

 

それから2日後の事でした。

 

学校から帰ると母と近所のおばさんたちが4人うちの前で立ち話をしていました。

 

私に気付くと母がおかえりと声をかけてきて、おばさんたちも私におかえりと会釈し、それじゃあ後でと言いながらそれぞれ帰っていきました。

 

「なんかあった?」母に聞くと

 

「町内で亡くなった人いてね、後でお線香つけに行こうって話ししてたの。あんまり話したことない人なんだけど町内会長さんだからね」

 

ふと忘れかけていた男の子の話を思い出してしまいました。

 

まさかね。たまたまだったのかもしれないと自分を納得させました。

 

それから1週間後ぐらいにまた下校途中に空き地からあの男の子が出てきました。

 

「君、毎日来るの?」と聞くと

 

「ううん。でも昨日も入ったしその前も」

 

「あのさ・・・・・揺れた?」また心臓がバクバクしてきました。

 

「えっ?なんで知ってんの」

 

「この前もここにいたね。揺れたって騒いでた」

 

「そうだっけ。あ、あの後誰か死んだ?」

 

面白がって聞いてきたので人が死んだというのに不謹慎な子だなと少しムッとしながら「町内会長さんがね。でもたまたまかもしれないよ」と答えました。

 

しかし男の子はそんなの気にする事もなく

 

「そうか、やっぱり!ゆれると誰か死ぬんだ」と意気揚々と答えて歩いて行ってしまいました。

 

そんなことってあるわけない。そう思いながらもまた彼が「揺れた!」というのを心待ちにしている自分もいました。。

 

それからまた3日後だったか男の子が入っていくのを見かけたので出てくるまで空き地の前で待っていました。

 

草をかき分けて出てきたその子と目が合って「揺れた?」と冗談めかして笑いながら聞いてみると「うん、揺れた」とまたもあっさり答えられたので驚きました。

 

「びっくりしないの?怖くないの?」

 

「ううん、だってもう何回もゆれて、だれか死んでるし、なれた」となんとも冷めた答えが返ってきました。

 

男の子によれば1年以上前のある日下校時に一人でふらっと空き地に入り込んだら地面が大きく揺れたので慌てて空き地から出て家に帰り、家族に地震すごかったねと言うと地震なんて起きていないと言われたそうです。

 

空き地では木もわさわさ揺れたし突き上げるような大きな衝撃があって、ああこれは家がつぶれたかもしれないと怖くなったほどだったと言うのです。

 

また揺れが起こるのではと行ってみたけどそれ以降はしばらく揺れることはなく、やはりあれは地震だったんだ、みんなが気付かなかっただけかもしれないと思ったそうです。

 

道路側から見ると草が生い茂って空き地の全容が見えないのですが男の子によれば木の周りは踏み固められてスペースができ居心地がよかったので秘密基地にしようと度々入り込んでいたと言います。

 

ある日いつものように秘密基地へ行くとまたあの大きな揺れがきたそうですが、家族も地震なんてない、それよりもじいちゃんが亡くなったから今から病院行くからと空き地の話はあやふやになったようでした。

 

また何度目か空き地に入り込んだ時、地面が揺れたというのです。

 

やはり地震は起きていなかったけど空き地からの帰り道喪服を着たおじさんおばさんがある家の前に集まっていて、誰か亡くなったのだなと思ったそうです。

 

ふと、そういえば空き地が揺れた日は誰か亡くなっていたと気が付いた男の子は、また空地が揺れるのを今か今かと待ちました。

 

そしてまた揺れた!という日の翌日彼の家の隣の家に救急車が来たそうで、その翌日「祖父が亡くなりました」と男の子の家に隣人があいさつに来たと言います。

 

「あの空き地がゆれると、人が死ぬんだよ。人が死ぬのをおしえてくれてるんだ」男の子はそう言って落ち着いた様子で帰っていきました。

 

それから私は実家を出て寮のある高校へ進学したのであの後あの男の子がずっとあの空き地へ通っていたのかわかりません。

 

また、あの男の子と出会ってからもう8年経ちますが、あの男の子が今どのように成長しているのかも私にはわかりません。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter