怪文庫

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小道の先のアレ

私は怖い話を調べるのが好きで、自分の住んでいる近くの話ならよく聞くことも多い。

 

尾ひれ胸鰭のついたもの、微妙に話が変わっているものも”なんだか聞いたことあるぞ”こういうパターンのものも多くある。

 

友達Nがちょっと面白い話を仕入れてきたと教えてくれた時も、またどうせそういった類のものだろうと思っていた。

 

話の始まりは、友達Nが会社の同僚と高速道路を走っていた時に遡る。

 

 

「そういえばNさん、怖い話好きでしたね」

 

「おー、好き好き。何かあるの?」

 

「怖いもの好きの人には物足りないかもしれないですけど」

 

「あるんだ?どんなの?」

 

「F市の山から隣の県に続く山道、その山道からさらに山へ登る脇道にある朽ちた祠を知っている?」

 

その同僚が言うにはちょうど通っていた近くの一般道のお話らしい。お店から徐々に山へ向かうと人の足では若干遠く、かといって車なら素通りしてしまう小道があるらしい。

 

その小道の先には小さな祠があるというのだ。

 

「祠ね」

 

内心、Nは、よくある話だと感じたらしい。ネットが普及して大体の話が普及された今、何かしらの改変によって歪められた話も多い。

 

「で、その祠がどうしたの?」

 

「終わりです」

 

「え?」

 

「だから、小脇に小さな祠があるんです。これって、怖くないですか?」

 

拍子抜けもいいところで、話はそこで終わりだったらしい。

 

「あのね、それじゃあ怖い話でも何でもないじゃん。何か出てくるとかじゃないの?」

 

「そういわれても・・・、あの、よければそこにこれから行きませんか。そんなに遠いわけじゃないし」

 

会社の用事は終わっており直帰だった為、暇つぶしがてら二人で向かうこととなった。

 

駐車できるスペースを探すのだけでも苦労し、近いと言いながらそれなりに歩かされ、スマホのライトで照らしても今一つわかりづらい道を歩く。

 

夕暮れ時であったが、話していた道に入ると木々で明かりが遮られ、山道はあまりにも気味が悪かったらしい。それがたまらなく怖くて、背筋がぞくぞくしたとNは言った。

 

「あそこです」

 

同僚はそう声を出した。そして同時に、何かの声にかき消されたらしい。

 

「おい、お前ら何してる?」

 

暗がりから二つの眼が光っていたそうだ。

 

といっても、妖怪や幽霊ではなく、おじいさんが一人いたそうだ。

 

「あ、すみません」

 

「えっと、道に迷ってしまいまして」

 

反射的に嘘をついてしまったのは良かったのだ。

 

身元を確認されれば大変であり、そうなる前に走って逃げるぐらいの覚悟があったらしいが、あいにくと暗くて相手もこっちが誰だかわかっていないと判断したからだ。

 

「お前ら、あれを見に来たのか」

 

「あれ?」

 

「そうだ、あれだよ、あれ」

 

それまで怪し気にこちらを見ていたおじいさんは気づけばニヤニヤとした表情で近づいてきており、その姿はさながら化け物じみていたそうだ。

 

「ただ、今日はどうにも日が悪い。来週の木曜、同じ時間に来なさい。面白いものを見せる」

 

そこでおじいさんは右手を出してきた。

 

いったい何事かと思ったらしいが、金をくれと言ってきたのだ。

 

都合、二千円渡せと言われ、同僚が支払ったらしい。

 

「これを持っていなさい」

 

渡されたのは掌に収まるサイズのきんちゃく袋。無くさないように言われ、今日は帰るように言われたという。

 

結局薄気味悪いおじいさんからお金を取られただけの話をしてくれたわけだが、隣にいるNはとてもうれしそうだった。

 

なぜなら彼は、あれ、とやらを見ることができたらしいからだ。

 

ただ、Nはソレがなんだったのかは一切教えてくれない。

 

多分Nは何があってもソレについて話す事はないらしい。

 

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