怪文庫

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これくらいおじさん

私は数年前、腫瘍の摘出手術を受けました。

 

発見が早かったため比較的、簡単な手術で済み、大事には至らなかったのですが、手術の前にみた不気味な夢のことが今でも気になっています。

 

夢は週に一度、全部で三回みました。

 

一度目の夢では路上で知らないおじさんと向き合っていました。おじさんはにんまり笑いながら両手で何かを包むような仕草を繰り返し『これくらい?これくらい?』と呟いていました。

 

まったく意味はわからないのですが、起きてからも妙に気味悪く印象に残る夢でした。

 

二度目の夢でもおじさんは『これくらい?』と同じ動作を繰り返しながら当時、勤めていたオフィスの端で私をにやにや見ていました。

 

やっぱり意味がわからなかったのですが、私はその職場でかなりのストレスを感じながら働いていたので、おじさんのなにかを包むような動作は私のストレスの大きさを表そうとしているのかな、と考えました。

 

三度目は、おじさんから電話がかかってくる夢でした。自宅でくつろいでいるとき、けたたましく鳴る電話を取ると、何を言っているのかわからないほど激しい怒号の後、『殺してやる!殺してやる!殺してやる!』と叫ばれ、電話は切れました。

 

起きたとき、心臓がバクバクしていたことを覚えています。

 

その翌週の人間ドックで腫瘍が見つかり、すぐに手術を受けることになりました。

 

あのおじさんは腫瘍の存在を知らせてくれていたのか、それとも私が死ぬのを待っていたのか。

 

あれ以来おじさんの夢はみませんが、ふとしたときに思い出してはあれこれ考えてしまうのです。

 

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