我が家の蔵には一つの「筒」がある。正確にいうと筒状の箱である。
祖母曰く「呪いの箱」なのだそうだ。
それを初めて見たのは私が、まだ5歳くらいのときだ。
アニメか何かの影響だったのだろう私は「探険」にハマり、「探険ごっこ」と称して、よく家の中で遊んでいた。
その時も蔵で「探険」して遊んでいたのだが、蔵の奥にしまわれていたその「筒」を私は見つけた。
私はその「筒」を持って、祖母のところに行くと、普段は優しい祖母が、
「お前はなんてものを持って来たんだ!」
と酷く恐ろしい形相で私の手から奪い取ったのだ。
その時の祖母の恐ろしい顔は今でも覚えている。
祖母は、私がもう少し大きくなってから、その「筒」について教えてくれた。
それは祖母の子供の頃の話だ。
その「筒」が欲しいと祖母の父、私の曽祖父を訪ねて来た人がいた。
曽祖父は必死に断ったが、結局その人に根負けしてその「筒」を譲る事に決めたそうだ。
曽祖父はその人に
「これは「呪いの箱」です。決して開けないでください」
と言って渡していたらしい。
しかし、「筒」はその人の非業の死の報せとともに戻って来たのだそうだ。
曽祖父はその報せを聞いた時、
「ああ、開けてしまったのか」
と悲しそうに呟いていたそうだ。
祖母は真剣な顔で、
「これは本当に「呪いの箱」だから、お前は決して開けてはいけないよ」
と私に言い含めた。
あれから何年も経った。祖母も亡くなり、「筒」はまだ蔵にある。
けれど、私はその「筒」を開けようとは思わない。
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