怪文庫

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見え猿様

これは私が地元へ帰った時に起きた事である。

 

私の地元は地方都市からかなり離れた田園風景が広がるいわゆる田舎と呼ばれる場所である。

 

農作業をしている両親の仕事を継ぐために都会の学校にて勉強している。

 

学校が長期の休みに入ったためこのタイミングで帰省をしようと考え帰ってきた。

 

都会の風景になれるとやはり田舎の風景は懐かしくも寂しいものがあるなと感じていた時に私の目の前を何かが通り過ぎていった。

 

光に照らされたそれは猿のように見えた。

 

その猿はどこか他の猿と違うシルエットをしているように私は感じたので、猿を目で追おうとしたが既にその猿はいなかった。

 

周りは畑ばかりであり、上る木なども遠くの場所にあり隠れるような場所などどこにもなかった。

 

奇妙だなと思いながらも私はそのまま実家に向かった。

 

その日は久々に出会った両親に歓迎され実家の料理を楽しみ寝床についた。

 

寝る前にふと昼間見た何かを思い出す。

 

あれは一体なんだったのだろうかと目を閉じ、私は眠りについた。

 

するとなぜかその猿の姿がはっきりと見えた。

 

大きな牙に普通の猿より鋭い爪をもった銀の毛を持つ、そいつは叫び声をあげながら私に襲い掛かってきた。

 

その瞬間に私は目を覚ました。

 

私の体には何も異常はなくそれが夢であることを理解しました。


その日の日中は父の農作業を手伝っていた。

 

畑にできた作物を収穫していたときにまた私の目の前を黒い影が通り過ぎた。

 

おかしいのは私は地面を向いていたのにその影を見たことだ。

 

そして私が収穫した作物は人が食べたとは思えない歯形が残っていた。

 

それを見た父は何事かと思い、辺りを見回すが当然周りには何もいなかった。

 

父の顔はよくない表情をしていた。

 

その日の夜の食卓にて、父は「お前は見え猿様に憑りつかれた」と言ってきた。

 

父が言うにはこのあたりの土地に信仰のある霊であり、しばらくこの土地から離れて戻ってきたものに憑りつくのだと言った。

 

日中は姿を見れず、目をつむるとその姿を見ることができるという。

 

父も昔に憑りつかれたことがあったが1週間もしないうちにどこかへ行ってしまわれて、目をつむっても見えなくなるとの事だった。

 

その間は不思議な現象に悩まされるが我慢してほしいと言われた。

 

実際のところ私自身に危害はなかったが作物などに被害が出ることを考えて私は早めに実家を後にするとした。

 

その不思議な出来事は私の人生でも貴重な体験であった。

 

あの日から数十年流れたが懐かしいものだ。

 

忘れられない体験だったのか、今でも目をつむれば見え猿様がはっきりと見える。

 

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