怪文庫

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白蛇様

私の体験した怖い話です。


私の実家には神棚があって、祖母は毎朝お神酒を供えて家内安全を祈願していました。

 

そのせいか、私も何かあるとすぐに家神様にお祈りをしていました。


東京の大学を卒業し、都内の広告代理店に就職しました。

 

事務員として働いている内に、営業の先輩と男女の仲になり、幸せな日々を送っていました。


しかし、幸せは長くは続きませんでした。

 

彼が浮気をしたのです。

 

相手は同じ会社の後輩で、彼女が妊娠してしまい、責任を取って結婚することにした。と言われ、別れを告げられました。


後輩は寿退社し、会社の皆は彼と後輩はお似合いだとしきりに二人を褒めました。


しばらくの間、私は嫉妬と空虚さでおかしくなりそうでした。

 

そんな時、心の支えになったのが、白蛇様でした。


白蛇様は、私が大学生の時に買った陶器の小さな蛇の置物です。

 

家神様に祈ったように、私は何かあると白蛇様に祈る習慣がついていました。


私は白蛇様の為の祭壇を用意し、毎朝お神酒をお供えするようになりました。

 

宗教は心の安定に役立ちます。


「白蛇様、白蛇様、彼と後輩に天罰が下りますように」


私は白蛇様に祈り、彼と後輩への怒りをぶちまけました。


後輩の結婚式に、私も出席しました。怒りで気が狂いそうでした。


「白蛇様、白蛇様、どうかあの子に天罰が下りますように」


帰宅してお風呂で泣いてから、私は何度も白蛇様に祈りました。


三ヶ月程した頃でしょうか。

 

同僚から、後輩が流産したことを知らされました。


その時は(やった!)と思いましたが、後味の悪さも同時に感じました。


それから、白蛇様に祈るのはぷつりと止めました。

 

何だか、急に怖くなってしまったのです。


ある夜のことでした。

 

しゅるしゅるという微かな音で私は目を覚ましました。

 

体が金縛りにあったように動きません。

 

唯一動かせる目を必死に動かすと、枕元に小さな白い蛇がいます。

 

蛇はだんだんと大きく長くなり、私の胸の上にとぐろを巻いて乗りました。

 

息が苦しくなり、意識が遠のきました。


翌朝、私は四十度の熱を出しました。


(白蛇様の祟りだ……)熱に浮かされた頭で思い、実家に電話を掛けました。


祖母に事情を説明すると、熱が下がったらすぐに近くの神社でお祓いして貰いなさいと言われました。


翌々日、熱が下がり、私は白蛇様を持って、アパートから一番近い神社へ向かいました。


神主さんに事情を説明すると、「この蛇の置物は、呪物になりかけている」と言われました。


そのまま、白蛇様を神主さんに渡し、私もお祓いを受けました。


それ以来、私の周りで怖いことは起こっていませんが、風の便りで彼と後輩が離婚したという噂を聞きました。


軽い気持ちで、神様を作ったり、人を呪ってはいけないと学びました。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter