これは私が経験した不可解な話です。
どのように確認すればいいのか分からないため、皆さんに聞いて頂きたいと思います。
私は都内の食品メーカーに勤める女子社員です。
趣味は美容室巡りで、気になるサロンはよくチェックしています。
もちろん、ネイルケアもこまめにしており、ネット予約を利用してお洒落な雰囲気のネイルサロンを探していました。
いつものネイルサロンにマンネリ化した私は、どこか新しいサロンはないかとSNSをチェックしていました。
すると、“みつばち89”さんと言う方が
「〇〇サロンのサオリさんのネイルテクは凄い」
とつぶやいていたのを発見。
私はサロン予約アプリでそのネイルサロンを見つけました。
サイトにはおしゃれで洗練された雰囲気漂う写真が掲載されており、またリーズナブルな料金も気に入って、早速そのサロンを予約することにしました。
当日、初めて訪れたそのネイルサロンは雑居ビルの10階にありました。
古びたビルの専用エレベーターはとても乗り心地が悪く、ゴォンゴォンと横に揺れながら上に登っていくのです。
正直、「故障しないで」と思ったくらいです。
辿り着いたサロンは打って変わってとても美しく、清潔感のあるカウンセリングチェアなどが目の前に広がっていました。
ビルは古いけどサロンはまとも、その様子にほっとしました。
ただ、接客をしてくれた女性スタッフだけが気になりました。
とても若い方でマスクはしているものの見た感じはどう見ても22〜23くらい。
ピンクベージュに染めた髪は可愛らしくお団子にまとめていましたが、小さな声でもそもそと喋る陰気な様子です。
私は簡単なネイルケアを予約していました。
その子は予約内容を確認すると席へと案内し、私の両手をじっと見つめ黙々と指のささくれを取り始めたのです。
何も喋らず語らず、こちらが話しかけても「そうですね」としか返ってきません。
他にも数人のネイリストがいましたが、みんなお客さんと楽しくお喋りをしていました。
私は「大人しい子なんだな」と思いそのまま彼女のネイルケアを受けていました。
ただ技術は素晴らしく、30分後には私のネイルは素晴らしく整った仕上がりになっていました。
上機嫌で「ありがとう」とお礼を言ったのですが、彼女は静かに「いえ」と返しただけ。
少し寂しい気がしましたが、出来栄えが良かったためその日はそれで良しとしたのです。
1ヶ月後、
私はまたあのサロンにケアをしてもらいたくて、ネット予約をして来店することとなりました。
あいからわず古びたビルに入りエレベーターで10階へ。
ゴォンゴォンと鳴りながら横に揺れるその動き方がこの前と少し様子が違っていました。
「止まったらどうしよう」と不安に思うも、エレベーターは無事10階へと到着しました。
すると、目の前にあるはずのこの前のサロンの姿が一変しており、赤と黒で装飾されたおどろおどろしいサロンへと変化していたのです。
ネットには「一部改装しました」と表示がありましたが、まさかここまで変わるとは思っていません。
疑心暗鬼で中に入ると、目隠しをされ裸で四つん這いになっている男性がいるではありませんか。
思わずひぃっ!と声を漏らすと、1人の女性がこちらへ目線を送っています。
恐る恐る見てみると、
黒のアイマスクをしたボンテージ姿の女性。
左手に血まみれのペンチを持っていて、足元には無数のネイルチップが散らばっていました。
でも、よく見るとそれはネイルチップではなく、本物の人間の生爪。
慌ててエレベーターへと乗り帰り、急いで1階を押して扉を閉めました。
怖くて体がぶるぶる震えていたくらいです。
「入るビルを間違えたんだ!」そう思って外にでると、
でもやっぱりこの前と同じビルなのです。
何が何だか訳がわからず、私はサロンに電話をしました。
移転もしておらず住所も変わってなければ同じビルに違いないと。
改装も壁紙を「レモンイエローに変えただけだ」と言うのです。
私は電話を切るともう一度10階へと登って行きました。
エレベーターは静かにすんなりと動き、やっといつものサロンへと到着したのです。
サロンにはこの前の彼女が出迎えてくれました。
気を取り直して前回と同じネイルケアを受けるも、心臓が落ち着きません。
ふと、彼女の顔を見ると、なにやらボンテージ姿の女性と似ています。
ピンクベージュの髪、ほっそりとした左手…。「サオリ」と書かれたネームプレート。
今考えれば、“みつばち89“さんがつぶやいた「サオリさん」と言う人はこの人なのでしょう。
でも普通、「ネイルテク」なんて書き方するでしょうか?
もしかしたらこの女性とボンテージ姿の女性は同じ人?
リツイートしようにも、“みつばち89“さんのアカウントが消されてしまい、確認のしようがありません。
でも帰る際、サオリさんはぽつりと「たまにあるんですよね」と意味深な言葉を投げました。
今でも謎ですが、私が見たものは一体何だったのでしょうか。
著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter)