怪文庫

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二年二組

私が通っていた女子高には噂がありました。


それは、『二年二組は誰も知らないクラスメイトがいる』


または、『校舎の二階の右から二つ目の教室に何者かがいる』というものです。毎年、そこが二年二組の教室になるからです。

 

その教室で写真を撮ると、見知らぬ女生徒の後ろ姿が映り込んでいる。


先生が人数ぶん用意したプリントを配ると、なぜか一枚足りなくなる。


教室で落とし物があっても、クラス全員心当たりがない。


校外学習や遠足にいくと、バスガイドさんが、「まだもうひとり、生徒さんが戻っていないんじゃないですか?」と言うことがある、もちろん全員乗車している。等々の、不可解な出来事が起こるというのです。

 

私は件の二年二組になったのです。


クラスメイトたちは怖がったり、面白がったりと、最初の間はよく話題になりましたが、すぐに慣れて誰も怖がらなくなりました。

 

ある日、私は仲の良いクラスメイトと三人で帰ることになりました。


校門に向かう途中、その中の一人が、教室に忘れ物をしたから取ってくる、と言い出しました。


私ともう一人のクラスメイトがついて行こうか、と言いましたが、


「いいよ、ここで待ってて」と、

 

忘れ物をした友人は一人で教室に戻って行きます。

 

私たちからは、二年二組の教室の窓が見えています。

 

そして友人の席はちょうど窓際でした。

 

 

しばらくすると、その友人が窓際にあらわれて、自分の机の引き出しから忘れ物を取り出しています。


「あれ、誰だろう」


私と待っていたクラスメイトがそう言いました。


見ると、机を探っている友人の背後に女生徒が立っていて、こちらに手を振っています。


夕陽が差し込んで、窓の桟が影になり、それが誰かはよくわかりません。


が、たぶんクラスメイトの誰かなのだろうと、私たちも手を振り返しました。


それに気づいた友人がこちらに手を振って、窓際から離れ、その誰かも友人の後を追うように姿を消しました。

 

戻ってきた友人に、


「さっきの子、誰だったの?」


と訊くと、


「え、教室には誰もいなかったよ」


と、言います。


「あんたの後ろに誰かいたよ、ウチらに手を振ってきたもん」


もうひとりのクラスメイトがそう言っても、


「えー? そっちが私に手を振ってたんじゃないの? だから私も振り返したんだけど」


と、怪訝な顔をします。


「そういえばさ……その子、セーラー服着てなかった?」


私と一緒にいたクラスメイトが思い出したように言いました。

 


思い返すと、確かにその人物はセーラー服を着ていました。


なぜその時にすぐ変だと思わなかったのか、自分でもわかりません。

 

不思議ですが、なぜかいつも見ているような気持ちになったのです。


そこで初めて、あの二年二組の噂を思い出し、


「嘘でしょ、マジ?」


と、三人ともゾッとしたのです。

 

後日談ですが、その高校の制服は現在はブレザーですが、20年以上前はセーラー服だったそうです。


もしかすると、「あの子はそんな前から、そして今もあの教室にいるのかな?」

 

卒業してからも、時々思い出します。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter