私の地元には、ある都市伝説がある。
それは、古い家に伝わる不思議な風習に関する話だ。
その家には、代々受け継がれる「玉手壺」と呼ばれるものがあった。
それは、一見ただの大きな壺に見えるが、その中には何かが封じられていると言われていた。
そして、その玉手壺を手に入れた者には、不思議な力が宿るという。
力といっても、超能力的なものではなく、何か特別なことができるわけでもない。しかし、その力を手に入れた人々は、何かが変わった感じがするらしい。
そして、その家には不思議な風習があった。
その家に入る者は、必ず玉手壺を見せてもらわなければならない。
そして、玉手壺に触れなければならない。
触れた瞬間、何かが身体に流れ込んでくるような感覚があるという。
しかし、ある時を境に、変な噂が広まった。
それは、玉手壺を見た者は必ず死んでしまうということだった。
その死因は、心臓麻痺だと言われていた。
その家には、その風習に従って玉手壺に触れた人々が、亡くなったという話が伝わっていた。
そして、その風習が止められたのは、最後に玉手壺に触れた者が死んでしまったからだという。
しかし、本当にそんな風習があったのか、それはわからない。
ただ、その家は今でも存在しているし、そこには何か不思議なものがあるという噂は、今でも残っている。
つい最近、私は友人たちと、何気なくその家の前を通りかかった時に、その風習と噂話について思い出した。
友人たちは、「それは都市伝説だ」と笑いながら話していたが、私はなぜかその噂話が頭から離れずにいた。
数日後、私はひとりでその家を訪れた。
正直、少し怖かったが、百聞は一見にしかずと思い、勇気を振り絞って噂の家へ向かった。
家の前に立つと、建物はとても古びた印象を受けた。
その風貌はいかにもだったが、なぜか家の中に入りたくなってしまった。
そして、ドアをノックした。
すると、年配の女性が出てきた。
私が玉手壺について尋ねると、女性はにこやかに語りだした。
「ああ、玉手壺ね。それは、古い家に代々伝わるものだわ。でも、今はもう風習は止めているの。危険だからね」
その言葉を聞いて、私は安堵した。それでも、何か引っかかるものがあった。
「でも、一度見せてもらえないですか?」と私は聞いてみた。
女性は首を横に振りながら、「それは、もういいのよ。今はもうやめているって言ったでしょう?」と笑顔で答えた。
私は、あきらめることにした。しかし、その時、私は何かを見た気がした。
壁の一部が、ゆっくりと動いていた。
私は一瞬、目を疑ったが、その後には何もなかったかのように、動きは止まってしまった。
何が起こったのか、私にはわからなかった。
その後、私は何かを感じたまま家を後にした。
帰り道、何かがついてきているような気配がしたが、振り返っても誰もいなかった。
しかし、数日後、私は不思議な夢を見た。
私は、その家の中にいて、壺に触れようとしていた。
すると、何かが私につかまり、体が動かなくなってしまった。
目が覚めると、私は病院のベッドの上にいた。
私の周りには、医師や看護師たちがいた。
「あなたは、心臓麻痺を起こしていたんですよ。今は大丈夫ですが、もう少し慎重に生活してくださいね」
私は、自分が触れたはずのない玉手壺の壺が、夢の中でもう一度現れたことを思い出した。そして、その家に行ったことが、今の自分に何かをもたらしたのかもしれないと感じた。
それから数週間後、私はあるニュースを見つけた。
その家の女性が亡くなったというものだった。
彼女は、何かに憑かれたようになり、自分で命を絶ったという。
私は、その家に関わったことが、自分にも影響を与えたのかもしれないと、今でも不安に思っている。
著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter)