これは私の友人が学生の頃に体験したという話です。
彼はいつも病院で夜勤をしており、よくある話ですが、そこが幽霊が出る噂のある場所でした。
彼はまったく霊感もなく、幽霊やら妖怪やらなんてものは一切信じないタイプなので、その噂話が話題に出たらいつもウンザリしていました。
ちなみにその幽霊の噂とゆうのが、深夜2時を過ぎると霊安室からうめき声がしてくるとゆうものでした。
なんてバカらしい、と彼は辟易していましたが、事件は起きてしまいます。
深夜2時過ぎ、その日は職員がやたら欠勤し、ほぼ1人で彼は見回りをしていました。
ふと霊安室の噂を思い出して、その日はなぜか吸い込まれるように不思議な気持ちで霊安室に足を動かしていたのを覚えているそうです。
霊安室の前についた途端、爆音が流れました。
それはなんと彼自身の叫び声で、彼の内側からでもなく、霊安室の中から鳴り響いていました。
しかも閉じてなければいけない扉がなぜか開いていて、彼は中に入ってしまいました。
叫び声のする方に歩いていくと、一台の安置箱が開いていて、中をのぞいてみましたが誰もいませんでした。
しかし叫び声が箱の中から鳴り響きつづけています。
なんだこれ、夢に違いない。
そう思って振り返って帰ろうとしたら、目の前に顔面蒼白の「自分」が立っていました。
ドンッ!!
彼はその「自分」に押したおされ、安置箱の中に突き飛ばされ、箱のフタが閉じられてしまいました。
パニックになった彼はひたすら叫びながら、フタを開けようともがきました。
叫びながら、箱の中で自分の声は反響し、しかも箱の外からもその叫び声が鳴り響いてきます。
声を出すのをやめて、冷静にその箱の外の声を聞いてみると、なんだか大量の人のすすり泣きが聴こえてきました。
それは全てどこか知っている声で、恋人や、家族や、欠勤しているはずの同僚たちの声でした。
いよいよとてつもない恐怖に襲われて再び叫びながら彼は箱を開けようとフタをなぐったり蹴り上げたりしましたが一切開きません。
彼はその夜、闇の中で叫びながら倒れるように気を失いました。
遠のく意識の中で炎に包まれる感覚になりながら...。
......目が覚めると彼はいつもの詰め所で眠っていました。
夢だったんだ、そう思いたかったのですが、彼の爪にはビッシリと安置箱の木材の破片が大量に刺さって血だらけになっていました。
彼は翌日、辞表を出したそうで、この話を聞いてから、行方不明です。
著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter)