怪文庫

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いつもとは違う金縛り

これは、私が18歳頃に体験した出来事です。


神奈川県三浦市の集合住宅が実家の私は、ある時期から金縛りにかかることが多くなっていました。


ただ、金縛りといっても身体の現象でもなることは知っていたので、霊的な現象との結びつきは半信半疑でした。


ところがある日、ベットの右側にテレビがある自室で横向きでベットに寝転びながらテレビを観ていると、金縛りにかかる前触れになる耳鳴りが鳴りはじめました。


始めは小さい耳鳴りが、テレビの音が聞こえなくなるくらいに大きくなった瞬間、身体が動かなくなりました。


金縛りになるのは初めてではなかったので、耳鳴りや身体が動かなくなるのは慣れたものだったのですが、この日だけは少し違っていました。


その違いとは、いつもなら目を瞑った状態でかかる金縛りが、この時は目が開いた状態で動かなくなったのです。


しかし、それでも冷静だった私は、耳鳴りで聞こえなくなったテレビ画面を見ながら「こんなこともあるんだ。」と心で思いながら金縛りが解けるのを待っていました。


そうして待っていた私は、視線だけは動かせることに気付いて何気なくテレビから自分が寝ている枕元に視線を移すと、何か灰色の物体が目に入りました。


全体像が見えたわけではないのですが、その物体は人の頭だと直感し、小柄で灰色の髪をした老婆がベットの横にうつむき加減で正座をしているのだと感じました。


それに気付いた私は、危機感を覚えて無理矢理に金縛りを解こうと目を閉じようとしてみたり、腕や脚を動かそうと抗っていると、体感で10秒ほどで金縛りを解くことができたのです。


金縛りが解けた私は、息づかいが少し荒れていて、身体は着ていたTシャツが湿るほどの冷や汗をかいていました。

 

 

そんな息も絶え絶えで重くなく感じた身体を何とか動かした私は、再度ベットの横を確認したのですが、そこには何も居ませんでした。


あれは何だったのかは今も分かっておらず、もしかしたら目を閉じたまま金縛りあっていた時も傍らに何者かが居たのかもしれないと思い、小さい耳鳴りがする度に恐怖で身体を起こすようにして金縛りを避けるようになりました。


その後、実家を出た私は金縛りになることはなくなったのですが、その事実にも少し恐怖を感じ、実家には得体のしれない何かが居たのではないかと今でも時々思い出しますし、20年経った現在でも、あの灰色の髪をした頭だけは脳裏に焼き付いて忘れることはできません。

 

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