これは私が小学生時代に体験した話です。
都会の雰囲気から比べるとかなり田舎の風景が立ち並ぶ地域で暮らしていた私は、友人たちと秘密基地ごっこをして遊ぶことが日課になっていました。
学校が終わり、放課後は友人たちと集まって近くの竹藪に行き段ボールなどを持ち寄って基地を作ることに精を出していました。
自分たちだけの空間を作れて、なんだかそれが有頂天で別にその秘密基地で何をするわけでもないのですが、適当に喋って夕方になり解散という流れで楽しんでいました。
しかし、その秘密基地が原因で色々と不可解なことが起き始めたのです。
それはこの秘密基地に近づくと不幸なことが起こるのです。
大体自分を含め5人でその秘密基地を作って遊んでいたのですが、まず友人A君が高熱にうなされて学校を休みました。
まだその段階では秘密基地が原因だとは思っていません。
残りの4人で秘密基地に集まり時間を潰し翌朝の学校で今度はB君が足を骨折して入院してしまったと判明。
ちょっと友人たちの間で不穏な空気が立ち込めて、なんだか背筋がゾクゾクとしたことを覚えています。
次にC君が不注意から物を落として足の小指が複雑骨折してしまいました。
まだ不幸が舞い込んでいないD君と私は学校で授業を受けていても気が気ではありません。
C君に不幸があった段階で秘密基地に原因があるのではないかと思い行くことは控えていたのですが、まさかのD君にも不幸が訪れました。
それはバイクとの交通事故によって頭を打って大怪我をして入院してしまったのです。
残された私はもう完全に心が怯えてしまい、それからは家から出ることもできませんでした。
約3ヶ月ほど登校拒否をして家に閉じこもっていたのですが、不幸があった友人たちが回復して学校に登校しているということを噂で聞き「もう大丈夫だ」と思い学校に行くことを決意しました。
久しぶりに会う友人たちは、みんな前と同じように元気そうで自分もなんだか嬉しくなって学校生活を送るうちに、段々と秘密基地の呪いのことは忘れていきました。
そんな時ふとA君が「前みんなで秘密基地作ったよね」と話し出したのです。
その言葉を聞いて私は秘密基地の呪いのことが一気にフラッシュバックしてしまい身体中に恐怖が襲い震えが止まらなくなりました。
しかし、みんなのことを見ると全く秘密基地に対して恐怖というものを抱いておらず不信感を抱きました。
何故か前一緒に怖がっていたD君もまでもあっけらかんとしています。
そして、話はどんどん展開し「秘密基地に行ってみよう」という話になってしまったのです。
自分は結構友人たちの顔色を少し伺う癖があったので「行きたくない」と言って空気を悪くすることができず嫌々ながら行くことにしました。
竹藪に入りダンボールを置いた場所まで行くと、その段ボールはもうなくなっていてただの竹藪だけがそこにはありました。
場所を間違えたかなと思い色々と探しては見たのですがどこにもありません。
きっと誰かが片付けたのだろうということで、その日は解散して何事もなく終わりました。
それから数日が経ち、今度は私の体に異変が訪れました。
頭がとにかくグラグラして辛いのです。
きっと風邪を引いて熱が出たのだろうと鷹を括っていたら、立ち上がることさえできなくなってしまいました。
なのでトイレに行くことも一苦労で本当に身体に全く力が入らず辛かったです。
なかなか体調が良くならないので仕方なく病院に行ってみると何と悪性貧血という病気にかかっていました。
これは体内の血液が減少してしまう病で血の巡りが悪くなったことで歩行も困難です。
しばらくの間入院を余儀なくされて、ちゃんと歩けるようになるためリハビリまで経験しました。
入院中、本当にやることがなかったので、病室でいろいろなことを考えてしまいました。
その中にはやっぱり秘密基地の呪いのことを考える時間もあり本当にこの不幸の原因はなんなのかと凄く不思議でした。
夜、病院のベッドで眠りについていると夢の中の私は友人たちと秘密基地で遊んでいました。
段ボールを敷いて、どんちゃん騒ぎしている自分たちの姿を客観的に見てなんだか罪悪感が募りました。
入院期間は約1週間だったのですが、その間中、毎日夢で秘密基地ではしゃぐ自分達の姿を見て本当に頭がおかしくなりそうでした。
やっぱりあの竹藪には何かがあると思いネットや噂を頼りに情報をかき集めることを決意。
するとその竹藪にまつわるある噂が飛び込んできました。
なんでもその竹藪には昔小さな祠があって、それを取り壊してしまった町民たちに不幸な事が度々起きたという逸話があったことが判明。
月日が経つにつれてその噂は風化してしまい私たちが普通に生活している頃には、ほとんどの人が祠のことは知らずに育っていたようです。
なので自分たちはその元々祠があった場所で騒いでいたということで、そこに祀られていた神に咎められたのでしょう。
祠を壊したのは自分たちではありませんが、そのエリアに無断で踏み込んでしまったことでより神の気持ちを逆撫でしてしまったのでしょうね。
誰でも他人が自分の土地に無断で入って来たら嫌な気持ちになるものですから正直その神の気持ちにも共感できました。
従って、この話を知ってから一度もその竹藪には入っていません。
そして、友人たちにもこの竹藪にまつわる逸話について詳しく説明し「もう絶対に竹藪には近づかないほうがいい」ということを伝えました。
自分の熱意が伝わったのか友人たちは納得してくれてみんなもその竹藪にはいかなくなりました。
やはり神仏を怒らせると怖いということをすごく痛感したので、これからは何事にも注意を払って行動していかなければならないと肝に銘じました。
著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter)