私が中学生のとき、家族と一緒に、引っ越しの際に必要な家具を買いに行ったときのことです。
タイガーストーンであろうブレスレットがレジ横のザルに入って売られているのを見て
私は、猛烈にそれが欲しくなりました。
親にどうしても、と強請って、そのブレスレットを買ってもらいました。
休日はブレスレットを肌身離さず持ち歩いていました。
ある時の休日、両親と共にデパートに行った際に、ふと、帽子を置き忘れたことに気づきました。
店内で落としたはずなのに、いくら探してもない。
探し疲れ、近くに座るところはないか。と見渡しました。
すると、人のいないところにポツンと、ボロボロのキャップが背もたれにかかっている不気味なベンチがありました。
嫌でしたが、座った後、ダラダラ居直らずすぐに立ち去ろうと決意し、座りました。
ベンチに座り、どうしようと頭を抱えました。このままでは、怒られる、と。
その時ダメ元でブレスレットに" 帽子を見つけてください "と、お願いしました。
そして、もう一度探そう。と立ち上がり、ふとカバンを手に取ろうと振り返ったときです。
なぜか探していた帽子がベンチの背もたれにかかっておりました。
私は喜びました。そしてこれはブレスレットのおかげである、となぜか直感的に確信しました。
それからというものの、体育祭の天気を晴れにしてだの、体育のときに靴紐が取れないようにしてだの、しょーもない小さな願いをブレスレットに度々叶えてもらいました。
偶然かもしれませんが、本当によく願いは叶っていました。
そうして順風満帆に中学生時代を終えました。
しかし、一つ妙な事件があって…。
秋頃に、理科室で飼っていたメダカ10匹が、一夜にして全滅してしまいました。
このときは、寒すぎたことが原因で全滅した。として、クラスは丸く収まりましたが、なぜか私のブレスレットをつけていた腕の部分がジンジンと痛んでいたのを覚えています。
ただその後は何事もなく、希望した高校に無事合格し、高校生になった後も、ブレスレットに願い事をし続けました。
しかし、やたらと死骸に出くわすことが多くなりました。
トカゲ、カエル、虫、蛇…………。
毎日のように何匹も、冬でも、数は少ないけれど死んでいるのです。(冬は、冬眠していたカエルや蛇が、なぜか土から出てきて道で息絶えているような形が多かったです)
そしてやはり死骸を見ると、ブレスレット部がなぜかジンジンと痛むのです。
気のせいだろう。と思いましたが、中学生時代に比べ、ブレスレットへの願い事は控えめにしました。
ですが大切な大学受験の前日の事です。
ブレスレットへの願い事は控えめにしていましたが、神社へのお参りは勿論のこと、いつもより長めにブレスレットに願い事をしてしまいました。
テストが終わって、休み時間に友達と喋っていると、窓の方から、
ドン!!!
という大きな音がしました。
女子の数人が悲鳴をあげます。
それもそのはず、窓ガラスにスズメがぶつかって、ガラスにべったりと血がついていたのです。
担任の先生が宥めて、なんとかパニックは収まりました。
その時のブレスレット部の痛みは本当に痛かった(誰かに強く掴まれているような痛み)のを覚えています。
私の中でブレスレットへの疑惑が膨らみました。
あれは、周りの生き物の命を吸って持ち主の願いを叶えているのではないか、と。
第一希望の大学に受かり、春から大学生です。
大学生になってからはブレスレットに願い事はしていません。
今後なにかあったときにブレスレットに願い事をするかどうかは、いまだに決めかねています。
著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter)