怪文庫

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落武者の願い

今現在も、これが実際に起きていた現実なのか、それともただの子供の夢だったのか?
真相は未だ謎のままです。
 
私がまだ小学生だった頃。


やっと夏休みに入り、お盆に毎年恒例の、お寺参りに行きました。


そこには大きなため池がありました。


普段なら、溜め池にいる鯉を眺めたりし楽しむところですが、その時は何かが違いました。


その反対岸から、なんだか、ひんやりとした人の視線を感じました。よく目を凝らして見てみたのですが、反対側までは距離もあり、池の後ろは人が入るスペースもなく、木がびっしり植えられており、そのすぐ後ろにはフェンスがあります。


また、フェンスの後ろは歩道となっており、その向こうは車道です。


そこに行く事は、難しく、転落防止のチェーン型の門もあり、その場に入ることは、子供であろうと大人であろうと、難しく、もし入ったとしても、すぐに住職に怒られてしまうでしょう。


そして、もちろん、そんなところに人がいるのであれば、お盆で、大勢のお寺参りに来ている人たちや、車で入ってくる人たちが、気づかないわけがありません。


私自身も、この時、視線を感じただけであり、そちらの方向を見ても誰もいませんでした。


しかしながら、お参り中、なんだかずっと、その視線がついてきているような気がしてなりませんでした。


それは、最初にため池の付近の視線を感じたため、強く印象が頭に入っていたのかもしれません。が、確かに何かついてきているような、そんな気がしました。


私は怖くなり親に調子が悪いと言い、そそくさとお参りを済まし、車の中へ戻りました。

 

お盆が終わって、近所のお寺で友達と夏休みを満喫していたときのことです。

 

また、あのひんやりとした視線を急に感じました。


ちょうどその時、たまたま、かくれんぼの鬼役をやっており、1人だったため、思い切って見てみることにしました。


視線の場所は、お寺を支えている柱のの場所、空洞部分から感じました。


私は、その時お寺の上部分にいました。


視線が気になり、上から柱部分のお寺の下をを覗いてみると、なにやら、黒いモヤのようなものが見えました。

 

それはゆらゆらと動いており、その場にとどまっているようでした。


私は怖くなり、それらを必死に忘れようと友達と無理矢理遊び、気を紛らわすことに専念し、忘れようとすることしか、できませんでした。


しかし、いざ家に帰ってみると、あのモヤが何だったのか気になって仕方ありません。


そしてやはり、恐ろしくて仕方ありません。


また、お寺のうしろはお墓がたくさんあったので、恐ろしさをさらに感じました。


私は幽霊は存在しないと思っていたので、ただの見間違えと、暗示のように言い聞かせ、その日を終えました。
 
小学生の体力は計り知れないものがあります。

 

翌日、また同じお寺で友達に遊びに誘われ、ちょっと気が重くなりつつも、あの謎を解きたいと言う興味も多少あり、家で1人でいるよりも、友達と遊んでいる方が、気も紛れると思い、例のお寺で再び遊ぶことになりました。


すると、しばらくして、また昨日と同じ不思議な気配をお寺の柱の下から感じました。


私は勇気を振り絞り、もう一度お寺の上から、下の支柱のある空洞を覗き込むように、逆さになり、実際に見てみることにしました。


すると、そこには、以前の黒い影ではなく、はっきりと、鎧を着た武者落ち武者の生首がそこにはありました。

 

動きこそしませんでしたが、目はカッと見開き、首からは下は何もなく、鎧や顔、頭、には血が飛び散っています。

 

頭もちょんまげ姿で、残っている鎧は肩に付いている防具だけです。


普段、子供の想像する落ち武者と、言えば、頭に矢などが刺さっている、ちょんまげ姿の侍を想像するかと思います。


が、その武士は矢などはどこにもなく、今思えば、処刑されたかのような、きれいに首だけ切断されている殺され方をしていたように思います。


私は怖くなり、急遽遊びをやめ帰ることにしました。もちろんその日は恐ろしく、寝ることができませんでした。


しかしこれでは終わりませんでした、さらに驚いたことが、その翌日に起こることになります。


なんと、そのお寺の材木置き場から、何の発端もなく急に、昔の硬貨であ「永楽通宝」が見つかった、と言う話を友達から聞き、実際に見に行くことにしました。

 

先輩が見つけており、見せてもらいましたが、それは、紛れもなく昔の永楽通宝で、今まで何度もここで遊び、人が出入りしているにもかかわらず、急にそのようなものが現れ、しかも、3枚も落ちていたと言うのです。

 

そこは歴史的な場所でもなく、誰かが捨てない限り、地面の上に落ちているなんて言う事は、100%ありません。


私は目を疑いました。


先輩たちは最初は喜んでいましたが、徐々に先輩たちも気味の悪い気分になっていき、最初の興奮はどこへやら、みな静まり返ってしまいました。


そして、この3枚と言う数字に、私はピンときました。


視線があったことを1回と数えると、黒いモヤが見えたことが2回目、実際にうち首の落武者を見たことを3回と考えれば、3枚の硬貨というのは、何か意味があると思わざるをえませんでした。


彼は何かを伝えたかったのでしょうか?

 

その後は現れることもなく、何度お寺の下を見ても、それは存在しなかったですし、特別悪いことも起きませんでした。

 

少なくとも悪いことをしたかったわけではなさそうだ、と自己解釈し、現実逃避するしかありませんでした。


いったい彼は何がしたかったのでしょう?


最後に、人に、特に子供に自分の姿を見て欲しかったのでしょうか?


永楽通宝はその御礼だったのでしょうか?


その後、先輩方が永楽通宝を持ち帰りましたが、そのごどうなかったのかは、わかりません。


落ち武者も数年経っても、全く見えなくなり、普段の生活へと戻りました。


あれは一体何だったのか、謎は多く残りますが、不思議で恐ろしかったけれども、最後はお礼をしてくれたのかな?と、少しほんわかするような小学生時代の夏休みの思い出話でした。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter