怪文庫

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発光する雲

年始早々に祖母が倒れたことをきっかけに孫である私は大好きなおばあちゃんの介護をしていました。

 

一緒には住んでおりませんでしたが当時住んでいた家と実家は近かったため日中は実家のいる祖母の家に行きおばあちゃんとお話をしたり、日常のサポートをしる日々を送っていました。

 

病院の先生から長くて3年とは言われていたものの祖母は当時96歳。

 

いつ他界してもおかしくない年齢だったので、祖母と過ごせる日々は大変なこともあったけれどとても充実していた毎日を過ごすとができました。


ベッドに寝た切りでごはんの時のみに補助をすると体を起こすことができましたが、半年くらいからだんだんと補助をしてもおきるのが大変になってきたなぁ~と思っている最中持病の悪化で入院をすることに。

 

 

入院を極力避けてきたので、祖母はその入院がすごく嫌がっていました。


1週間ほど入院をしてからまた、自宅での介護生活になった時には入院時点滴などでごはんも食べられなかったからか以前よりも体力は落ちており、話をしているのも大変なのだろうなぁと思うこともありました。


寝たきりの祖母はマッサージのみで体を動かす回数が少なくなり、元から便秘気味だったのこともあって、訪問看護の方に排便の手伝いをしてもらっていたのですが、それでもお腹が張って苦しそうにしており、見ているこちらもつらい気持ちになったり。

 

祖母が排便に対して思い通りにいかないことがあったせいか私に当たることがあり介護を半年以上をしている私自身も疲れてきて名前を呼ばれても私も反応すること拒否したこともあります。

 

まだ暑さが残る夏の終わりの9月の夜。

 

体力的に落ちていた祖母を心配したのか夜は診てくれている母から連絡がありました。

 

いつもはそんなに夜はいかないのですが、その時の母の様子からなんとなく不安になり夜寝る前に祖母のもとへ行くことにしました。

 

行ってみると、いつも通りの祖母の姿があり夜に私が行ったことを祖母も驚いたのか、「夜に来てくれて家族は大丈夫か?」と私に問いかけてくれました。

 

その話をきっかけに祖母の体調、気分も良かったので二人でいろいろな懐かしい話などもしました。


だいたい1時間程度実家で祖母との会話を楽しみそろそろ祖母も眠そうになったので私は自宅に帰ることに。

 

祖母はニコニコしながら「ありがとう」と伝えてわたしも「ありがとう。また明日ね、おやすみ」と言いながらいつもはしないのになんとなぁく祖母にギュッと抱き着き自宅に帰路しました。


次の日の早朝。

 

1本の母からの電話で飛び起き内容も聞くか聞かないかの状態で早々に実家へ行くと、まだ寝ているんじゃないかな?って思うように祖母は息を引き取っていました。

 

その日は葬儀屋さんへ連絡したり親戚に連絡したりと慌ただしく過ごし、祖母が息を引き取ってから二日後に葬儀をし悲しい気持ちより多少ありましたが、やることに追われていたので、葬儀が終わった後に悲しみがドッと押し寄せてきました。


夜星空を見るのが好きだった私は夫と二人で祖母の葬儀が無事に済んだこと、とても悲しい気持ちでいっぱいだってことなどを星を見ながら話をしていました。


風は吹いておらず星空が瞬き合い、気持ちよい夜でした。

 

すると、1つの雲がどこからともなく南の方角から流れてきました。

 

普通の雲だったらそんなに気にも留めないのですが、かなり低い位置(実家の屋根を指標に建物3階くらいの高さ)に楕円形の雲が光りながら南から北の方へ動いているのです。

 

最初は鳥か何かかと思ったのですが、大きさからすると鳥よりも全然大きくどう見ても雲なのですが、中央を中心に「雲」とはっきりとわかるくらいの発光をしていたのです。


驚いた私は言葉よりも先に夫に「ねーねー!!」とその雲のようなものを指差しをしながら見るように促しました。

 

夫は私が指さした方向に目を向けると「鳥…じゃない…ね…」と困惑しながら言葉を選ぶように反応し、雲のようなものは動きながら20秒ほど私たちの前を通り過ぎスッと消えていってしまったのです。


なんのとも不可思議な経験だったため私たちは言葉を発することができず、雲のようなものが消えたのち少したってから「あれは、おばあちゃんだったのかな…」と二人で目を見合わせました。


本当にあれは何だったのでしょうか。

 

ちょっと怖いけれど祖母だったらと思うとなんだかうれしい気持ちにもなってしまう出来ごとでした。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter