小さい頃から霊感はあるようだった私は、30代の頃、タロット占いにのめり込んだ。
占われるのではなく、占う方だ。
霊体験もわりとある方で、結構怖い目にも遭ってきたので、普段は「チャンネル」(第6感のようなもので開けていると浮遊霊等が近寄ってくる)を閉じていたのだが、タロットの時は事前に部屋を清め、チャンネル全開で必ず1人で占っていた。
そのため1セッションが終わると、かなりの疲労感があり、続けては占えない。
初めは遊び半分で友達や知人の占いをしていたが、回を重ねるうちに段々と当たる確率が多くなってきた。
自分でも自分自身を占ってみたが、何故か占えない。カードが意味をなさない答えばかりを出してくるのだ。
昔、やはり霊感が強い女性の上司から「あなたは占いを金銭目的でしてはダメよ」と言われたことがあり、自分自身をすり減らすからだろうと思っていた。
だから、当たる確率が上がると、友達からの相談も多くなるが、体調や気分が優れないときは断っていた。カード自体が答えてくれないし、言葉や意味の解釈も変わってくる。
そんなある日、転職したのだが、その会社で嫌なおじさん上司に当たってしまった。
自分はやり手の営業マンで、自分の言う通りにしていれば良いと、いかにも昭和オヤジで、イキがっていたが、その人は他の人達からも嫌われいた。トップからもちょっと不審がられていた。
私もこの会社、大丈夫なのかな、と思ったが自分の事は占えないので、仕方が無く、その上司のことを占ってみた。
が、何度やっても「転落」のカードが出る。
あんなイケイケオヤジに「転落」の2文字は微塵も感じられない。
何のことだろうと思っていたが、会社の人間には誰にも伝えず、占いの事も黙っていた。
そのまま日々を過ごしていたが、2週間ぐらい過ぎた頃、そのおじさん上司が突然、解雇となった。
どうやら裏取引とかで下請けの会社と不正を働いていたらしく、それがトップにばれて、解雇となったようだ。
まさにイケイケからの「転落」である。
そしてカードの意味にもちょっと怖くなったのを実感した。
それをきっかけに少し自分の占いが怖くなり、しばらくは制御しておいた。
それでも、時おり友達や親友の相談があり、占いはせずに相談に乗っていたが、少しカードに頼った方がいいかな、と気になる時はタロットを引っ張り出していた。
タロットカードにはそれぞれの意味があり、表に出たとき、描かれた絵が上下でも意味が違うし、出た位置によっても違う。
それをどう解釈するのかは占い師次第である。
特に私のは「霊感」もプラスされているようで、どうしても答えや相手に伝える結果には慎重になってしまう。
そんなある日、親友に新しい恋人ができたとの報告があり、どうしても彼との未来を占って欲しいとの依頼がきた。
今考えれば、彼女もその歳で、このままその彼にのめり込んでいって大丈夫だろうか、という心配もあったのだろう。
普段は普通の相談で済ましていたのだが、その時は何故か私もとてもその相手のことが気になり、久々にタロットを使用することにした。
いつも通り、事前に部屋を清め、お香を焚き、占いを始めたが今まで1回も出たことがないカードが出た。
「死」を意味するカードである。
それも近い将来に起こりうるという位置での配置だった。
今までの経験からそのカードを引き当てるとは、と背中がゾクリとし、時間を置いて再度占ってみた。が、何度やっても「死」のカード、もしくは「事故」などよくないカードばかりが出る。
どう彼女に伝えようかとしばらく悩んだが、最終的に「これ以上、その人と関わるとあなたが酷く悲しむことになるから、すぐに分かれた方がいい」と言葉を慎重に選びながら伝えた。
その後、彼女からの連絡はしばらくなかった。私も非常に気にはなっていたが、自分から連絡はできずにいたので「今回は占い、外れたねぇ」と笑って報告してくれることを願っていた。
でも3週間ぐらい経ってから、彼女から沈んだ声で連絡が入った。
あの後、私の占いを信じてくれた彼女は、その彼と別れたという。
そしてその後、彼氏だったその人が突然、事故で亡くなったと言われた。
もしあの時、別れていなかったら、もっと深い悲しみに打ちひしがれていたと思う、と感謝されたが、私は少し複雑であった。
彼女の力に少しでもなれたことは嬉しいが、怖くもなった。と同時に昔の女性上司の言葉を思い出していた。
あれは、私に対して「遊び半分ではダメよ」という意味でもあったのかもしれない。
ネットでは色々な占いが溢れているが、どれが本物か見極める必要がある。
特にタロットなど霊感がつきものの占いはある意味、怖い。
私もあれからタロットはほとんど使用していないし、「チャンネル」はできるだけ閉じたままである。
人は私も含め、未来を知りたがるが、知らなくてもいい場合もあるのではないだろうか。
遊び半分での使用は危険かもしれない。
著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter)