怪文庫

怪文庫では都市伝説やオカルトをテーマにした様々な「体験談」を掲載致しております。聞いたことがない都市伝説、実話怪談、ヒトコワ話など、様々な怪談奇談を毎週更新致しております。すぐに読める短編、読みやすい長編が多数ございますのでお気軽にご覧ください。

怪文庫

人形供養

私が大学生の頃の話です。


結構前の出来事なので記憶が曖昧な部分が多いです。


普段から仲の良い友人、先輩たち男女10人程で、ここは出る、と有名なお寺に行きました。


時間は23時頃だったと思います。


何人かはいくつかの心霊スポットに行っているようなメンバーでしたが、私は初めての心霊スポットでした。


怖いのが苦手で、怖い話のテレビを見てしまうと夜に一人でトイレに行けなかったり、思春期でも母親の布団に潜り込んで一緒に寝かせてもらうようなタイプですが、いつも一緒にいる皆と一緒に行きたい!置いていかれたくな!という気持ちでついて行きました。


暗い、人気のない、お寺というだけですでに怖いですが、それ以外は特に目立ったことはなくただただ歩いていました。


誰かが何かを喋ることもなく、じゃり道を歩く音だけが響いていました。


怖がりな私はこの時点で皆についてきたことを後悔し始め、今後は幽霊スポットには行かないようにしよう、などと考えていました。


小さいお寺なのですぐに全体を回り終え、出口に向かっていました。


そんな中、ふと声がする事に気づき耳を澄ましていると、小さい子供が複数人遊んでいる「きゃっきゃっ」という声や、ブランコを漕ぐ「キー、キー」といった音が聴こえてきました。


その声や音だけで結構大勢な数の子供がいるように思えましたが、そんな様子を見落とすはずもなく、出入り口は見えているので大人数の子供達は入ってくることも見逃すはずもなく…。


そしてその声や音はとても近く、横にある木の茂みの向こうにでもいるように感じました。ただ、誰も何も言いません。


聞き間違いかと思い、しばらく耳を澄ましていましたがその声は聞こえなくなることもなく、遊び続けている声が聞こえました。ただ、誰も何も言いません。


私だけに聞こえているのか不安になったため、「今、何か…」と言いかけたところ隣にいた先輩に「何も言うな」と口を塞がれました。


流石の私も、これ以上何も喋ってはいけないと直感で感じました。

 

 

そして、そのやり取りがきっかけかのように皆が目配せをし、一斉に走り出しました。


じゃり道を走る音だけが響き、いつの間にか子供達の声も聞こえなくなっていました。


急いで車に乗り込み、かなり離れたいつも集まっている駐車場まで猛スピードで向かって行きました。


今のようにLINEがない時代でしたが、やり取りすることもなく自然と考えか一致していたようです。


車で向かっているその間、誰も何も言いません。


皆が集まり確認すると、私の聞こえていた声はやはり全員聞こえていたようです。


私が何か言おうとしたことで、「これはやばい」と皆が思ったそうです。


私達がお寺に行ったのは夜遅く、とてもじゃないけど子供が遊ぶような時間ではありません。また、お寺内に子供どころか私達以外もいない状況でした。もちろん、ブランコもありません。


そして、そのお寺はいらなくなった人形を供養するための場所で、子供の声が聞こえてきた場所は人形達が供養されている建物の横だったのです。


もしかしてあの声は…、と思いましたが、何か見たわけではないのでそれぞれが思うことを心の中に留めていました。

 

後日、違う知り合いが昼間の明るい時間に行ったそうです。


特に何もなく、人形が供養されている建物の中にも入ったそうです。(人形を供養しにきた人がそこに置いて行く場所のため、誰でもいつでも入れるようになっています。)


建物の中は、誰かが持ってきたけどまだ住職さんによう供養も何もされていない状態の人形、ぬいぐるみで埋め尽くされていたそうです。


一応、ちゃんとしたお寺なので放置されているわけではなく、ただたんに順番待ち?のような形かと思います。


そしてやはりブランコもなく、地域の子供が遊んでいるようなこともなく、私達の体験したことは嘘だったのでは?と思いつつ車に乗って帰ろうとした時、ふと振り返るとお寺の入り口にある鳥居のところに、その鳥居より大きな背丈のお面をつけた男の人が立ってこちらを見ていたそうです。


その男は追いかけてくるわけでもなく、ただただ腕を組んでこちらを見ていただけだったそうです。


そのまま車を飛ばし大学まで来て、私達に報告しにきたそうです。


「そのまま来たら霊がついてきてたらこっちまでついてきちゃうじゃん〜」とからかったり、流石に私達はそちらの体験の方が嘘なのでは?と疑っていましたが、普段から心霊スポットを好んで楽しそうに行っている知り合いが大袈裟に「あれは本当だ!」「昼間の明るい時間に見間違えるわけがない!」と言っていたので何かしらが「いる」のかな、という結果になり、その後は誰も話題に出さなくなりました。

 

その後は何事もなく過ごしていますが、母親になった今。


なるべくぬいぐるみや人形を買わずに過ごしてきましたが、子供がいるとそういうわけにはいきません。


家にある大量のぬいぐるみを子供達が成長して使わなくなったらどうしようか、人形供養のお寺に行くのは怖いです…。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter