夜、峠道を車で移動していたときの話です。
私と母は、後部座席に座り、父が運転していました。
スピードはだしていませんが、急なカーブが多いのでいつもその道路を通る時は気をつけるようにしていました。
しばらくすると、いきなり対向車が対向車線をはみ出してきました。
避けることができずにぶつかってしまいました。
私たちのほかにもトラックも巻き込まれて、計3台の事故となったのです。
そのときの記憶は私にはまったくわかりません。私だけ意識朦朧としていたようです。
後から両親に聞いた話なのですが、私以外の家族は、顔にガラスの破片が飛び散って怪我をしたものの、それ以外は平気だったそうです。
医者が言うのも私が助かったのは奇跡なのだそうです。
私はというと、頭を強く撃ち頭から血を流していました。おまけに事故に遭う前後一ヶ月くらいの記憶がありません。
幸い、私以外は入院することもなく、元気だったのですが、私は約一ヶ月入院しなければなりませんでした。
入院中、意識が戻り、頭がはっきりした頃、よく金縛りに遭うようになりました。体が動かず、顔は動かせるのですが、怖くて左右に振ることができませんでした。
私の怪我や後遺症はもっとひどい状態で介助がないと生きていけないレベルだったそうなのですが、リハビリを繰り返し頑張ったことと、年齢が若かったことから回復スピードが早かったようです。
奇跡的に退院後、家族からなんとも奇妙な話が舞い込んできました。
事故後、車をレッカーしないといけなかったので、車の中の荷物を全部出す必要がありました。荷物を運んで、中身を確認すると、髪の毛のようなものがびっしり入っていたのです。
最初はレスキューさんが来た時髪の毛でも落ちたのかと思っていたけれど、それがあり得ないくらいの量だったようです。しかも家族以外誰も触っていないのです。
私の髪の毛でもないし、母や父の髪の毛でもないのです。
家族のだれでもないような黒い髪の毛だったようです。
私はその話を聞いて怖くなりました。今までこのような体験はなかったので、はじめはからかってるのかと思っていましたが、あまりにも真剣に言ってくるので冗談ではないと悟りました。
私が劇的に回復できたのは、数年前に亡くなった祖父が助けてくれたのだと勝手に思って、感謝していたのですが、その話を聞いてから急に怖くなってしまいました。
なぜか私は誰かに恨まれるようなことしたかなぁと考えるようになりました。
因みに祖父の髪の毛は短髪でグレーでした。だから違うと思いました。
私は以前、友達から結婚を反対されていました。なぜ反対されたのかはわかりませんが、いつも私をライバル視してはマウントをとるような子でした。
私はその友達と距離を置くようにして、結婚しました。
それからもLINEでは「どうせ離婚するよ」とまで言われていたのです。
だから私はLINEを無視していたのです。相変わらず無視しているのにも関わらず、私含め夫のことも悪く言うので、ブロックして完全に縁を切りました。
断定はできませんが、もしかしたらその子が私を恨んでいるのかもしれません。
その子にそのような力があるのかはわかりませんが、オカルト大好きな子で、よく占い師に頼ったりしているような子です。
それと関係があるかどうかはわかりませんが、普通の人よりは詳しいと思います。
ただ疑う前によく考えてみました。彼女の髪の毛は……するとおもいだしたのです。
彼女の髪の毛は黒かったのです。
髪を一度も染めていない、きれいな黒髪でした。
それに肩につくかつかないかくらいの髪の毛だったので、荷物の中の髪の毛の特徴と合っていたのです。
まさかとは思うけれど、本当にその子かどうかは、誰にもわかりません。疑うのは失礼かもしれませんが、どうしても頭が離れません。
LINEでの発言を見る限り、私に言いたいことはたくさんありそうにみえます。
昔から髪の毛には、不思議な力が宿ると聞いたことがあります。
お人形さんも髪が伸びるという話をテレビで見たことがあるくらいです。
だから髪の毛のことが気になって気になって怖いのです。どうして、あの大きな交通事故が起きたのだろう。
カーブのないゆるい道だったのに。路面も凍っていないのに。誰が私たちを危険な目に遭わせたのだろう。誰が私を死ぬ寸前まで追いやったのだろう。
そして、あの大量の髪の毛はいったい誰のものなのだろう。どうしてそこにあるのだろう。
事故からしばらく経ちましたが、未だ解決はしていません。
事故を起こした加害者も記憶にないと言っているようです。
しかし、今現在家族全員が元気にすごしているので、平和が戻りました。
事故の事、不思議な出来事は少しずつ忘れていこうと思います。
そして、見守ってくださるご先祖様に感謝して、今ある幸せを大事に生きていこうと思います。
皆さんも、運転する時は思っている以上に周りに気を配りながらじゅうぶんに気をつけてください。
著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter)