これは、私が初めて一人暮らしを始めた時の話です。
社会人になって3年目を迎えた頃、ある程度の貯金も貯まりそろそろ実家を出ようと考え、初めての一人暮らしを始めました。
たくさんのアパートを内見させてもらい、結局決めたのは築浅の新築同様の綺麗さのあるアパートに決めました。
アパートの間取りは1LDKで、女性の1人暮らしという事もあったので部屋は2階(最上階)を選びました。
また、そのアパートはペット可の物件であったため、実家で飼っている愛犬を、片付けが落ち着いたらアパートに連れていくつもりでいました。
当時の仕事は、介護職で日中の勤務に加え、夜勤もあった為、昼前に帰ってくることも月に何度かあり、昼夜逆転してしまう日もありました。
引越しを済ませてしばらく経ったある日、いつも通り夜勤を終えアパートに帰宅し寝る支度を済ませベットで横になっていると、ある気になる音が聞こえ、気になって眠れなくなる日がありました。
その音というのが、例えるならば「子どもが遊ぶ車輪のついた押し車の動く音」でした。
それだけではなく、なんとなく足音のような走っているような音も聞こえていました。
自分の住まいが1階であれば、上の階に小さな子どもが住んでいるんだろうなと思っただけなのですが、先程もお伝えした通り私の部屋は2階(最上階)の為、そのような音が聞こえることは絶対に有り得ないのです。
怖いな、不気味だな、変だなと思いながら怖くて目を開けることも出来ずその日はいつの間にか疲れもあったのか眠ってしまいました。
その日はその後、同じ物音を聞くことはありませんでした。
その日以来、その物音を耳にすることはしばらくの間なかったため忘れかけていた頃の出来事です。
その日は仕事がお休みで、ベットで横になり昼寝をしようとしていました。
目を閉じてしばらくした頃、枕元に違和感を感じたのです。
どんな違和感だったかというと、「枕元を誰かが歩いてるような感覚」「まくらに手を乗せて体重をかけられたような、まくらがへこむ感覚」この2つです。
私は普段横向きで寝るため、まくらがへこむ感覚は、後頭部側で感じていました。
この時も怖くて振り返ることも目を開けることも出来ず、ひたすら寝てしまうか、この不思議な現象が終わるのを待つことしか出来ませんでした。
この日も前と同様気が付いたら寝てしまっていました。
また別の日には、耳元でなにかを囁かれたり、とても荒い鼻息のようなものを耳元で感じたりと不思議というか、とても怖く不快な出来事が多くありました。
そんな中、一人暮らしを初めて1ヶ月が経とうとしている頃、そろそろ実家に置いてきてしまった愛犬を迎えに行こうと考えていたときのことです。
いつものように寝る支度を終え、夜ベットに入り目を閉じてしばらくしたころ、また枕元を何かが歩いてウロウロしている感覚に加え、耳元で鼻息のようなものを感じることがありました。
またか…と思っていたのですが、よく考えると以前感じたものとは何かが違う!と思ったのです。
その何かというのは、以前感じたものは感覚的には人が歩いている感覚であり、耳元で感じていたとても荒い鼻息に関しても人の鼻息だったのです。
しかし、この日の夜感じたまくら元を歩いているその感覚も耳元で感じた鼻息もどちらも人ではなく犬のように思えるものでした。
今までの不思議で怖い出来事は、本当に耐え難くただただ怖いという感情ばかりでしたが、この日の夜に起きた出来事は、私の中ではとてもほっこりした気持ちになれるものでした。
なぜならば、「そろそろ愛犬に会いたい」「会えなくて寂しい」「早く迎えに行こう」と考え始めていた矢先の出来事だったため、私のその強い思いが愛犬に伝わったのかな、もしかしたら私の愛犬もそう思ってくれていて無意識に私に会いに来てくれたのではないか。
そう思ったからです。
その出来事があった翌日、予定していた日より少し早まりましたが、愛犬を実家へ迎えに行き、愛犬とのアパートでの生活がスタートしました。
それ以来、不思議な感覚や物音を聞くことは1度もありませんでした。
今思うと、初めての一人暮らしで自分でも気付かないストレスがあったのかなとも思います。
元々、小さい時からよく金縛りにあっていましたし、夜勤の際の仮眠でも必ずといっていいほど金縛りにあっていました。
その事からも、自分では大丈夫だと思っていても疲労が溜まっていたり、ストレスが溜まっていたりしたせいで、今回のような不思議な体験を何度か経験することになったのではないか。と思いました。
それと同時に、愛犬が家にやってきてくれたことで私の心の拠り所が出来たこと、スピリチュアル的な考えを言えば愛犬が悪いものから私を守ってくれていたのだと、そう思いました。
そうでなくても、今でも愛犬は私の体調やメンタルに気付いているかのように不調だなと思う日はそっと近くに来ていつも以上に寄り添ってくれています。
そのおかげか、怖い体験をすることは今ではもうすっかりなくなりました。
著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter)