怪文庫

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持ち帰った物

これは、俺の友達がもう何年も前に体験したっていう話なんだけどさ。

 

場所は隣町にある、今は使われてない○○総合病院ってとこ。

 

当時から7年ぐらい前に病院は閉鎖されたらしいんだけど、理由はいまいちよくわかってない。経営不振とか火事とか、いろいろ噂はあるけど、正式な発表はなかったらしい。

 

で、その病院に、俺の友達である地元のヤンキー3人組、仮にA、B、Cってしとくけど、が肝試しに行ったんだって。

 

時間は深夜0時過ぎ。3人はそれぞれのバイクを走らせ、病院の前にたどり着いた。

 

建物はそれなりにでかくて、正面のガラスは割れてて、病院名の看板も一部が落ちてて……まぁ、いかにもって感じの場所だったらしい。

 

でも、そこまでビビるタイプのやつらじゃなかったし、「うわ、マジで出そうじゃん」「一周して帰るか」みたいな軽いノリで、スッと中に入ったらしいんだ。

 

建物の中は、想像以上に静かだったって。


ガラスの破片を踏む音とか、自分たちの息遣いしか聞こえなくて、やけに湿っぽい空気が重く感じたとか。

 

で、一通り見て回ろうって話になって、まず向かったのが1階の事務室。

 

そこを物色してたら、Bが「おい、鍵あるぞ」って言い出したんだって。

 

古びた金属のカギの束みたいなやつが棚の中にあって、病室とか手術室の鍵がずらっと並んでたらしい。

 

それで「せっかくだから鍵使って各部屋見て回ろうぜ」って話になってさ、2階や3階の部屋を次々に開けて回ったんだって。

 

でも、特に何かあったわけじゃない。変な音がしたとか、人影を見たとか、そういうのも一切なかったらしい。

 

「意外と普通じゃね?」「つまんねーな」とか言いながら、1時間ぐらい探索して、そのまま帰ったんだ。

 

問題は、その翌日。

 

 

その日の夜、Bの家に電話がかかってきたらしい。

 

時間は夜中の2時前。

 

当時のBの実家は固定電話を使ってて、珍しくそっちが鳴ったから、眠い目をこすりながら出たんだって。

 

「……はい、もしもし?」

 

すると、相手の声がこう言ったらしい。

 

『夜分遅くに失礼します。こちら、○○総合病院です』

 

その時点でBはちょっとゾッとしたって。だって、昨日行ったあの廃病院から名乗ってるわけだから。


でも、作り声って感じでもなくて、普通に丁寧で落ち着いた男の声だったから、疑問に思いながらも自然と電話は切らなかったらしい。

 

電話の男はこう続けた。

 

『昨晩、当病院を訪れませんでしたか?』

 

Bは、一瞬迷ったけど、「……はい、まあ……」と正直に答えた。

 

すると、

 

『その際、事務室の棚から鍵を取られたかと思うのですが……』

 

ここでBは、一気に背筋が冷えたって。確かに鍵を取った。間違いない。(ただ時、この電話の相手が幽霊的な者とは思っていなかったらしい)

 

「……はい。少しだけ、使わせてもらいましたけど……」

 

その返事を聞いた直後だった。

 

『その鍵――かえせぇぇぇぇぇぇ!!!』

 

いきなり、さっきまで落ち着いてた声が、怒鳴り声に変わった。


ガチでブチ切れてる、怒鳴り散らすような声。でも、その一言だけで電話はブツッと切れた。

 

あまりの恐怖にBは腰を抜かしてしばらく動けず、ろくに眠れなかったらしい。

 

翌朝、すぐにAとCに電話して、「昨日のカギってどうしたっけ?」って言ったら、Aが「あ、それなら俺が持ってる」と。ポケットに入れたまま忘れてたんだと。

 

で、Bの話を聞いた3人は、幽霊か人間かはわからないが「さすがにヤバいかも」となって、昼間にもう一度病院へ向かった。

 

病院は前日と同じようにそこにあった。静かで、誰もいない、ただの廃墟。


Aが鍵をポケットから出して、「戻しておこう」と言って、事務室の棚にそっと置いた。

 

何も起きなかった。誰の声も、物音も、変な現象も。


3人ともほっとして、「もう二度と行かねぇな」なんて笑いながら病院を後にした。

 

 

でも、その数日後だった。Cが何気なくネットで「○○総合病院」のことを調べてみたらしい。

 

その病院――閉鎖されたのは7年前じゃなくて、15年前だった。おかしい。しかも15年前に取り壊されたって書いてある。

 

それに、その跡地にはもうマンションが建ってるはずなんだと。

 

「え、じゃあ俺たちが行ったの、どこだよ?」って。恐怖でいっぱいだったが、確かめたいという気持ちが少し勝り、3人でその住所をもう一度訪れることにした。

 

そこには、確かに新しいマンションが建っていて、病院の影も形もなかった。

 

ただ、Cがそのマンションの入り口をじっと見つめて、あることに気づいた。

 

「……これ、俺らが病院の時に出た正面玄関と、まったく同じ向きじゃね?」

 

駐車場の形、周囲の木、建物の位置、ぜんぶ合ってる。


地図上でも間違いなかった。3人が行ったのは、まさにその場所だった。

 

これ以上詮索も、病院の話題も一切ださないと話し合ったわけじゃなかったけど、3人は静かに家に帰ったらしい。

 

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