怪文庫

怪文庫では、多数の怖い話や不思議な話を掲載致しております。また怪文庫では随時「怖い話」を募集致しております。洒落にならない怖い話や呪いや呪物に関する話など、背筋が凍るような物語をほぼ毎日更新致しております。すぐに読める短編、読みやすい長編が多数ございますのでお気軽にご覧ください。

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あの日の呪い

私たちは、19歳のときに職場で出会った。当時わたしとMは19歳。Eは21歳。

職業柄みんな派手でおしゃれ好きな女の子。

共通の友達がいたり、趣味も合ったのですぐに仲良くなり、毎日行動を共にするようになった。みんなそれぞれ彼氏がいて仕事もプライベートも充実していた。

当時、私たちの中でのブームが怖場巡りだった。

怖場とは、いわゆる心霊スポットだ。

車の免許も取り立てで夜に車で出かけるのが楽しくていろんな怖場を巡った。

そのほとんどが、大した事ないな〜。怖いけどまあ特に何も感じないかな〜。と言う感想だった。

でも、私たちが怖場巡りを辞めるきっかけとなったある場所があった。

 

あの日。いつも通り夜に3人で集合して、

あらかじめ調べておいた怖場へと向かった。

そこは今までの場所とは空気が違うように感じた。

詳しい場所は覚えていないけれど、

住宅街をぬけ、山の麓にある地元の人しか知らないような神社だった。

鳥居をくぐり、石段を登っていくのだが

どうも登る気になれない。

体にまとわりつく空気が重苦しく、拒まれているようだった。

10段くらい登ったところで

MとEも、「帰ろう?なんだか気味が悪い、、」と言うので、小走りで車に戻り、私の運転で来た道を引き返した。辺りは街灯も少なく真っ暗だった。

 

住宅街に入る手前で何かが飛び出してきた。

キツネのような、イタチよりはもう少し大きかったように思う。

ブレーキを踏む間も無く真前を横切ったので勢いよく轢いてしまったのだ。

轢いたと言うよりは、踏んだと言う表現の方が正しいかもしれない。

3人で悲鳴を上げながら半ばパニック気味に住宅街を抜け街を目指した。

でも早く街に戻りたいのに、同じ場所をぐるぐるぐるぐるしているような気がしてきた。

3人の中で一番道に詳しかったEに、「さっきもここ通らなかった?」と聞いたら「どこで間違えたかな?」とEもパニックになっている。

行きはあまり感じていなかったが道がとても細くて、異様に圧迫感があるように感じた。

無我夢中で走り、やっとの思いで街に出たときはいつものよく知る街の景色にほっとして涙が出そうになった。

次の日恐る恐るタイヤに血がついていないか確認してみたが、何もついていなかった。

昨日の飛び出してきたものはなんだったのか。。

たしかに何かを踏んだ感触がまだ残っているのに。。

初めて怖い思いをした私達はもう怖場に行くのはやめようと決めた。

 

それから数ヶ月、何事もなく過ごしていた。

怖い体験のことなどみんな忘れていたと思う。

 

始めはEの彼氏だった。

「彼氏が死んだ。。」

まだ若かった事もあり、友人や知人の死に直面したことがなかった私はすごくショックだった。

自宅のベランダから飛び降りたようだった。

普段からすこし精神的に弱いところがあったようだが、まさか自殺するなんて、、と彼の家族もショックを受けていたようだった。

そのあとしばらくEとは疎遠になった。

 

それから半年も経たずして次はMの彼氏だった。

正しくは少し前に別れていたので元彼になる。

「元彼が死んだらしい。。」

ついこの間Eの彼氏が亡くなって、Mの元彼まで?なんで?!とわたしはすごくショックを受けた。

母親と二人暮らしだったMの元彼は、

朝なかなか起きてこなくて、様子を見にいった母親に発見されたようだ。すでに冷たくなっていたらしい。

とくに持病などはなく、前日までは元気だったようで死因は呼吸不全によるものだったらしいが原因はよくわからない。

 

仲の良い友人の大切な人が次々と亡くなって、

ショックも大きかったけど、気味が悪いなと言う気持ちもあった。

そのすぐ後だった。

仕事中に私の携帯に彼氏の職場の上司から何度も着信があった。

その上司には私も一緒にご飯に連れて行ってもらったり可愛がってもらっていた。

こんな昼間に何度も着信。。?と少し不安になりながらかけ直すと、彼氏が仕事中に倒れて救急車で運ばれた!との事だった。

夏の暑い日だった。外の仕事だったので、熱中症かなにかで倒れたのかな?とその時はあまり重大には捉えていなかった。でもそのあとメールが入っているのに気づき開いてみると、事故であること、とにかく早く病院に来てくれとの事だった。

急に手足が震えた。

事情を話し、早退させてもらい急いで病院にむかった。

当時住んでいた場所から職場までは、車で40分くらいだった。

急いで向かっているところに彼の母親から電話があった。

「まだ時間かかる?早く、、とにかく早く来て!危ないかもしれない、、」

まだどこかで事故と聞いても、自分の身にそんな不幸が起こるわけないと思っていたのか、そこまで重大に捉えてなかったのかもしれない。

その母親からの電話を切った後は、どこをどう運転して病院に辿り着いたのか全く記憶がない。

病院につくと彼の母親が取り乱していて、その姿をみて逆に少し冷静になれたように思う。

ちょうどすぐに救急の先生が出てきて状況の説明をしてくれた。

「頭を強く打ち、肺も損傷しています。非常に危険な状態です。ベストを尽くします。」

祈るしかなかった。とにかく祈りながら待った。

それから何時間経ったかわからない。

手術が終わった。

 

「なんとか一命は取り留めました。肺の方は心配ありません。ただ、頭を非常に強く打っているのでいつ意識が戻るかはわかりません。厳しいかもしれません。様子を見ましょう。」

その時はただ、命が助かったことに安堵した。

ドラマで見るようにしばらくしたら目が覚めて、

『もう!心配したんだから!』なんて言う日がくると思っていた。

現実は、、彼が目を覚ましたのは事故から3ヶ月後だった。しかもドラマのように目が覚めて急に話せるわけではなく、最初に指が動いて次に目が開いて瞬きをするようになって、、

赤ん坊が徐々に大きくなるように少しづつほんとに少しづつ出来ることが増えていくような感じだった。リハビリを重ね、なんとか立てるようになっても、まだ言葉はほとんど話せない。

ちょっとした事ですぐにキレるし、子供みたい。。すごく優しかった以前の彼はどこにも居ない。中身がまるで別人になってしまった。

 

あの怖場での恐怖体験をしてから1年以内に私達3人の彼氏が次々に不幸に合った。

これは偶然なのか、、

「絶対あの日の呪いだよね。」と、あれから10年以上経った今もMとEに会うとあの日の怖かった夜の体験を思い出します。。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter