怪文庫

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願い事には対価が必要

私の住んでる地域は丘陵地帯で長くて低い山と丘に挟まれています。開発されて家や商業施設が建ってる場所も有れば手付かずの地帯も有ります。

 

手付かずの場所には、よく有るあの場所は…とかって言われてる怖い噂が有るんですが、その中の有る場所で体験した話しです。

 

その場所の噂と言うのが、山と山の合間に大きな沼が有り願い事をすると叶う。

 

行くと帰って来れない。と言う人によって内容が異なる場所で話はたまに聞くのですが大きな沼なのに名前は無いうえに場所は誰に聞いても曖昧で分からないしその地域でそういう話し関連の場所ではマイナーな噂の場所で私自身も多分そんな場所は無いだろうし有ったとしても、私の住んでる地域は湧水がよく出て丘等の麓から湧水が出て小さな川になってたり、泉になってて小さな祠が有る場所が数ヶ所有るのでそういう場所の1つが何か尾ひれが付いて噂になってるんだろうな…と思ってました。

 

20年程前なのですが、当時先輩のお兄さんがやってるバーが有り暇な時はソコに行けば友達が誰か居るみたいな感じで私達の溜まり場になってました。

 

ある日いつものように暇を弄びながら友達とくだらない話しをしていると、今日は店が暇だと言って先輩のお兄さんも混ざってくだらない話しで盛り上がってました。

 

当時仲間内でブラックバス釣りが流行っていて、私の住んでる地域は小さな水場が多く誰かがブラックバスを放流してよく釣れて誰もまだ知らない穴場が多数有りました。

 

「あーゆう場所って何で直ぐに広まるんだろうなー…こないだなんか都内ナンバーが来てたぜ(笑)」なんて話してると、誰かが突然「そういえば願いが叶う沼なんて話しがあったなー」と言いだしみんな笑いながら「ねーよ!そんなもん!!釣り場ですら直ぐに他県の人間まで広まるんだから本当に有ったら直ぐに大騒ぎだろ」と話してると途中で混ざって盛り上がって居た先輩のお兄さんが急に真顔になり

 

『あれな…本当に有るんだよ。』

 

と言いだしみんな釣り場探し等で地域の地形は熟知してるのでバカにして笑いながら誰かが「だったらブラックバス放流して自分等だけの場所にしちゃおうか!」なんてふざけてると『アソコはダメだ!』と急にいつも穏やかな人なのに声を荒げて言いました。

 

それから口数が少なくなり最初はみんなビックリして様子を伺ってたのですが、やっぱりみんな気になるのか先輩のお兄さん(アニキとします)に「ここらの何処に有るんですか?」って1人言い出すと自分も含めみんなで、アニキに場所を聞きました。

 

最初は『もういいって!うるせーよ!』って感じだったのですがしつこく聞いてると『うっかり言っちゃったよ…』みたいな事を言って話し出しました。そうするとみんなテンション上がり今から行こう!(午前2時、飲酒運転、20年前)

 

するとアニキが

 

『イヤイヤ、○山の頂上に展望台が有るだろ?○山の軽い登山道と逆の◯山の登山道を途中から○山の頂上に向かう登山道に向かって頂上の手前にくるとお互いの登山道が見えて崖になってるよな?あの真下に有るんだよ山と山の間に大学が有って私有地になってるから普通には行けないし大学になる前も国の施設が有って管理区域になってたらしいからかなり昔から沼に直接行ける道は無いし沼から出る水も施設内で直ぐに地下通って川に出るからみんな知らないんだ。今からは絶対に無理だし大勢では行けない』

 

と言う事でしつこく頼み翌日アニキと私、アニキの弟である先輩で行く事になりました。

 

車で大学の正門に向かい手前で曲がると細い道で直ぐに山にぶつかり行き止まりになってました。

 

そこは大学生向けの古いアパートが山を背に並んで居て場所に対して不釣り合いな2m位の有刺鉄線の付いたフェンスが立ってるのが不気味でした。

 

それを乗り越えた時点で大学の敷地なので見つからないようにと言う事で大学のフェンスの土台に沿って湧水が流れ出てる湿地と藪を掻き分け登って行きました。

 

何故広い大学の隅の人気の無いフェンス沿いを行かないのか?と聞くと何故そんな場所に?と思う程数人の警備員がフェン沿いを行ったり来たりしているのです。

 

アニキ曰く『この時点で見つかると問答無用で警察に不法侵入で突き出されるから…』と言う事で普通に歩けば20分位なんだろうけど道なき道を音を立てないように1時間位かけて進みました。

 

暫く行くとフェンスが無くなりジメジメした森になり少し進むと突然森が開けてビックリする程大きな沼が突然目の前に広がりました。

 

どうやら3方に山に囲まれた窪地で湧水がソコに流れ溜まって沼になってるようでした。ビックリしながら見渡すと大きな亀が水辺に居て私達に気付くと水の中に入って行きました。

 

亀の居た場所に行き水の中を見ると何故なのか神社等でたまに見かける水の溜まってる場所にに小銭が入ってるような感じで数枚の小銭が入っていて水は少し濁っていて手を入れると思ったより冷たくなく見る限りでは自分の身長以上有りそうな深さでした。

 

私と先輩で異様な雰囲気が漂うなかそこらを散策しようとするとまだ日暮れまで時間も有るのに青白い顔色で『帰るぞ!もう良いだろ!!』となり引き返しました。

 

帰りの車の中で先輩が「あんな場所が有ったなんてなー…アレじゃブラックバス放流するのも大変だな。あの賽銭みたいのって何だろな?願い事か?それにしても1人で行って滑り落ちたら死ぬかもなー帰って来れないってそう言う事か?」

 

するとアニキが『どうせ今日来てない奴らも行きたがるだろうから行くんだろうけど全部自己責任な…』と明らかに変な様子で言いました。

 

正直私は雰囲気が嫌で沼には行きたく有りませんでした。

 

その日行かなかった友人達に質問攻めに合いましたが何故か重い気分になりあまり話す気になれず後日先輩と沼に行ったようでしたが帰って来てからあんな場所にあんな大きな沼が有るだけでも話題になるのに何故か誰もあまり沼の話題はしませんでした。

 

それから15年程経ち細々と個人で自営業を営んでた私は事業拡大をするのに設備投資の為に2千万程借り入れをしたのですが、仲間に裏切られ仕事を奪われ借金だけが残り生活が一変しました。

 

その時の私は精神的にかなり追い込まれ普段信じないのに占い師や霊媒師、神社にお参りしたり藁にもすがる感じで何か霊的な物に頼る感じになっていました。

 

そんな時です。あの『沼』を思い出したのは…私は何かに取り憑かれたように「アソコしかない!願いが叶っても戻れなくてもどっちでもいいじゃないか!」と思い出した瞬間沼に向かってました。

 

行く道は15年前と変わらず、一心不乱に沼に向かい付くと沼の前で(今の状況を何とかして下さい!お金が必要なんです!!)と懇願するように小銭を沼に投げ入れ願いました。

 

当たり前のように何も起こらず冷静になった私は沼のほとりで座ってぼんやりと水面を眺めてました。そうしていく内に精神的にキツく眠れて無かった私は眠くなってしまい。(寝よう…寝て沼に落ちたら落ちたでいいや…なんでもいいいよ…)寝ました。

 

起きると狭い3畳位のコンクリートの部屋でビックリして窓の外を見るとは日本じゃない?ヨーロッパみたいな石やレンガで出来た町並みで下を見ると歩いてる人は外国人。

 

空を見ると今にも雨が降りそうな曇り空で私は沼に居たはず…何コレ?とベッドに座り考えてると突然ドアが開き外国人が入って来て

 

「おい!早く支度しろよ!!」

 

『何?ここどこ?』と私が聞くと

 

「いいから!金稼ぎに来たんだろ?だったら着替えて早く下に来い!」と言い放ち行ってしまいました。

 

何で外国人と普通に話せる?あの外国人が日本語喋れるのか?イヤイヤここどこ?!金稼ぎに来た?沼に居たはず?沼で金が欲しいって願ったから!?

 

とパニックになりながら目の前のクローゼットを開けるとスーツが何着か掛かって居て何となく着てみるとオーダーしたかのように身体にピッタリしてる事に驚いてるとドアが勢いよく開き「早く!!」と手を引っ張られ下に連れてかれました。

 

ソコには10人位の人がいて見る限り色んな国の人が混ざってるようでした。ぼっと立ってると「どうせ今日にも死ぬだろ」「一緒に組みたくないな」と聞こえて来てどうやら私の事を言ってるようでした。

 

奥のイスに座ってる人に呼ばれ行くと

 

「3人1組で10回仕事に行ってもらう。内容はキウイフルーツの取引だ。成功報酬は1回200万で10回終えたら纏めて支払い契約終了」と言われ

 

『キウイフルーツ?ここどこ?何コレ?』と聞くと

 

『そう。キウイフルーツ。ゼスプリブランドの取引だ!こっちが買う場合は金を払わず殺して奪え!こっちが売る場合も渡さず金を奪って殺すのが仕事だ。ここはプリマブロフ自分で来たんだろ?さぁ仕事だ行ってこい』と訳の分からないまま白人と中東系の2人と組まされました。

 

プリマブロフ?ゼスプリブランド?キウイフルーツ?殺す?何コレ?

 

と立ち尽くしてると中東系の男が「そんなんだと今日死ぬぞ?」と『…何コレ?』と聞くと「今支配人から説明受けただろ!今日お前は直接受け渡す係りな?受け渡す際にいちゃもん付けろ。ソレが合図でオレとアイツで撃ち殺すからお前は今日は買いに行く日だからキウイフルーツを奪え。」と拳銃を渡されました。

 

どうやら受け渡していちゃもんを付ける人間とすぐ後ろに居て相手を攻撃する人間と運転と後ろから攻撃する役割に分かれて交代で行なう様でした。

 

拳銃も見た事も触った事も無いのに当たり前のように弾を確認してセーフティレバーのチェック等、言葉もそうなのですが全てそのプリマブロフと言う世界での知識は勝手に備わっているようでした。

 

車に乗り込み喉が物凄く乾いてる事に気付き『喉が乾いた』と運転している白人に言うと「どうせもうすぐ死ぬんだから関係ないだろ』と笑いながら言われ腹が立ったのを覚えてます。

 

その日の取引場所と言う路地裏に付くと道に止まってる車から3人の男が出来ました。自分達も車から降り私はお金の入ったリュックを背負って中東系の男と相手に近付いて行きました。

 

向こうも同じような感じで近付いてきて5m位手前で中東系の男は止まります。

 

私は皿に近付き1,5m位の所で相手が「今日は良い曇り空だな…」と言いながらキウイフルーツのダンボール箱を開け見せて来ました。私はリュックを背から下ろし明けて中が見えるように置きました。

 

相手はリュックの中のお金を数えはじめ、私はキウイフルーツを手に取り見ました。

 

すると相手が「おいおい2千万って話だったが100万足りなくないか?」と言いだし私は勝手に口から『つーかコレゼスプリブランドじゃないだろ?こんなん持ってきてどういうつもりだ?』と言ってました。

 

その瞬間相手の後ろに居た男が倒れ自分の後ろでガラスの割れる音がしてパンパンと花火みたいな音がしました。

 

私も勝手に手が動き目の前の男を撃とうとした瞬間相手の腕が肘から千切れてお腹が赤くなり倒れ相手の車が急発進して行きました。

 

当たり前のように自分は目の前の男と後ろの男にトドメで銃弾を撃ち込み落ちた薬莢を拾い集めて中東系の男にリュックを渡しキウイフルーツの箱を自分の車に載せました。戻って支配人とやらに報告してその日は終わりました。

 

次の日も同じように取引に行く途中「お前はあと9回だろ?オレはあと5回だ!あいつなんか3回だぜ!良いよなー」なんて会話してました。その日は私が運転手でした。中東系の男が受け渡しで白人が攻撃役でした。

 

昨日と同じ様な感じで進んで行き少しぼんやりと空を見てずーっと曇ってるな…と思ってるとパンパン音がなり見ると中東系の男が走ってきて白人の男が倒れてます。

 

「車のホイールを盾にして打ち返せ!」と車の後ろに滑り込んで来ました。撃ち合いが続き相手が倒れトドメをさし薬莢を拾い集めてお金とキウイフルーツを回収してると中東系の男が白人を見ていて助からない傷なのかトドメをさしてました。

 

戻ってキウイフルーツとお金を渡して支配人に報告すると白人が死んだのを伝えると何事も無かった様に事務的に終わりました。それをみて普通にスーパーで買えば100円何だけど何なんだけどプリマブロフって…と思いました。

 

次の日も仕事です昨日1人欠員したので新しい人が来ました。

 

日本人の様でしたが話し掛けても喋らない人なのか返事もせず少しイラッとしましたが死ぬかもだからそんなもんか…と思いました。

 

同じ様にいちゃもん付けて相手を殺して奪う毎日が続きます。中東系の男は10回終えて喜んでました。

 

その後は人が入れ替わりながらも毎日が終わり自分は気が付けば明日で終わりだ!と思ってると日本人が初めて話し掛けて来て、何でここに居るのか?どうやって来たのか?みたいな話しをしたら場所は違うけど同じ様な感じでプリマブロフに来てしまったみたいでスーパーのヤオヨーで買えば良いのにバカみたいねと言うとそのスーパー知ってたから同じ世界から来たんだなぁと思いました。

 

次の日運良く10回終えて支配人に伝えると「今日で終わりだ!ごくろーさん!まだやる?」『やらない。良いから金を寄こして帰らせろ。』と言うと「お金は纏めて渡すのでなく帰って回り回って入って来るから」

 

『…ふざけるな!』叫んだ瞬間気が付いたら沼の山の上の展望台に居て???となりポケットに入っていたスマホを見ると充電が切れていて車に戻り日付を見ると丸一日経って居ました。

 

家に帰ると私の事情を知ってる家族が泣いて大騒ぎしていて何処に行っていたんだと言われても何とも言えず(頭を整理する為に1人で考えてた)としか言えませんでした。

 

その後不思議な位偶然な出会い等が有り仕事が回り借り入れてた2千万があっと言う間に返済出来ました。

 

その後も続くと思ったらきっちり2千万あっと言う間でその後は不自由は無いですが細々と入って来ます。

 

報酬は支払われたと思ってます。

 

因みに沼を私と見に行った先輩と後日見に行った友人は突然時期は違うけど突然行方不明になり音信不通状態アニキはアレだけ明るかった人だったのに人が変わった様に寡黙になり店を閉めて仕事しないで不自由無く暮らしてるし1回会う機会が有り食事をしながら自分の事を話したら何も言わず『もう行きたくないな』と言って帰ってしまいました。

 

イロイロ考えると居なくなった人もアニキも沼に行って何か願ったのかも知れないです。願いによって私が行ったプリマブロフと違う世界なのか同じ世界なのか分かりませんが…

 

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