怪文庫

怪文庫では、多数の怖い話や不思議な話を掲載致しております。また怪文庫では随時「怖い話」を募集致しております。洒落にならない怖い話や呪いや呪物に関する話など、背筋が凍るような物語をほぼ毎日更新致しております。すぐに読める短編、読みやすい長編が多数ございますのでお気軽にご覧ください。

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リサイクルショップ

私がリサイクルショップで働いていたときの話です。

 

働き始めは覚えることがたくさんあり目の前の業務をこなすことに一生懸命でした。

 

ある程度の業務の流れに慣れ始めたとき新しい仕事を任されました。

 

それはお客様から引き取った品物の清掃です。

 

CDから食器類、冷蔵庫といった家電製品さまざまな品物を売れる状態にするという仕事でした。

 

はじめのうちは抵抗がありましたが慣れるとスピードが求められ目の前の商品を磨くのに一生懸命でした。

 

そんなある日、いつものように開店準備をしていたときのことでした。

 

お店のドアが開く音が聞こえたのでお客さんだと思いまだ開店時間ではないことを言いに行こうと思い入口に向かいました。

 

ただそこには誰もおらず、施錠されたドアがありました。

 

私の勘違いだと思いまた開店準備をしていると次は『すみません』という声が。

 

私はとっさに返事をしてしまい声が聞こえる方へ向かいましたがやはり誰もいません。

 

なんだか怖くなり店内には私以外のスタッフも2人いたため先程の出来事を話をしました。

 

ひとりは笑って気のせいだと言っていましたがもう一人は真剣な顔をして『すみません』という声に返事をした私の心配をしてくれました。

 

実は前に同じような経験をした従業員がいたとのことでした。

 

その従業員は声に返事を返したその日からなにか得体の知れないものに怯えていたとのこと。

 

私ともう一人のスタッフとともにその話を笑っていたのですがその日の仕事中。いつものように商品の手入れをしていたらカタンという音が部屋に響きました。

 

気にしないでいると誰かに見られているかんじがして振り返ると私が以前手入れした市松人形が入っている箱の上蓋が取れて中の人形がこちらを見ていました。

 

一瞬怖いと思ったんですが明るいのもあったし他にもスタッフがいたので箱を戻して気にせず作業に戻りました。

 

次の日、また『すみません』との声が。

 

気にしすぎて怖くなっていたためそのように聞こえるんだと思い気にしない、聞こえないふりをしました。

 

実際にこのようなことが数回起きてなんだか気味悪くなってきたので昼休みに店長に今まであったことを話しました。

 

店長曰くリサイクル品は新品と違い前の持ち主の思いや念がこもっているものがたくさんある、そのようなことがあってもおかしくはないと。

 

怖いという思いがよからぬものを生み出すこともあると話をされました。

 

気にしないというのは無理でも怖いという感情はなくし何か音がしたら他のスタッフのところに行ったりして気を紛らわせるようにしました。

 

そんなある日、いつもと違う感覚に陥りました。

 

なんというか空気が重い。

 

何処にいても誰かが後ろに立っている感じが抜けないし耳元がずっとゾクゾクしていました。

 

なんとなく生身の人間かもしれないという感覚になり急いで部屋の隅に行き後ろを壁にバッと後ろを振り返りました。

 

けどそこのは誰もいない。

 

『いや、そうじゃん。普通後ろにおったらビビるけん。誰かおったらやばすぎやろ!』と平常心を保とうと必死に思いつく限りの言い訳を頭の中で並べていました。

 

深呼吸をして気合を入れるため上を見た瞬間、目を離すことができなくなりました。

 

横にも下にも、もちろん後ろじゃない。

 

真上でした。

 

動くことも目を離すことも何もできずただ目が合っていました。

 

女の人なのか男の人なのか大人なのか子供なのかそれすら分からないのですがとにかく黒くて大きいものがそこにはいました。

 

カタン。

 

物音が聞こえてハッとしその場からどうにか離れて作業場に戻ってきました。

 

自分のまわりのどこも安心な場所はなく360度すべてが恐ろしくなりました。

 

以前スタッフが話していた私と同じような経験をした人がいるとの話を思い出しました。

 

その人は常に何かに怯えていた、と。

 

まさに今の私。

 

どうしよう、その人今どうしてるって言ったっけ?思い出せ思い出せ!

 

『その人いまどうしてるの?』

 

「今辞めてここにはいないよ。」

 

『え、何も解決しないまま?』

 

「それは知らない。けど最後の日に持ってきてくれたのが市松人形ていう日本人形でね。もし自分と同じようなことがあればこの人形を出して鏡に向かわせて。きっと解決うするからっと言って退職したんだよ。」

 

会話を思い出すと作業場の片隅に置いた市松人形を手にしました。

 

鏡に向かわせる形で人形をみる鏡の後ろからこっちに向かって黒いなにかが向かってきました。

 

市松人形に隠れる感じで顔を隠そうとしたそのときでした。

 

反転した鏡の中で私が笑いました。

 

その後の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまい、はっきりとは思い出すことはできないのですが私は無事でした。

 

ただなぜか真っ暗な箱の中に閉じ込められています。身体も思うように動かず言葉もでません。

 

これからどうなってしまうのか恐怖はありますが早くこのかび臭い真っ暗なところから出たい、それだけが願いです。

 

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