怪文庫

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のだけトンネル

信州は上田市にある「のだけトンネル」。

 

トンネルの上に墓地がある事もあり、昼間でも何となく薄暗さを感じるトンネルである。


実は、このトンネル入り口と出口の形が丸と四角と形が違うのだ。


聞くところによるとトンネルができた当初は出口も入り口も丸く、どこにでもある普通のトンネルだった。


ところが、トンネルができた後、何故か、出口側で事故が続いたのだとか…


決して激しい交通量でもないトンネルの出口での事故多発。


人々は、不気味がって利用を控え、トンネルはさらに薄暗さを増すことに・・・


特に夜間はほとんど車が通らない。


ある日、パトロール中の警察車両がヘルメットも装着せず原付バイクを2人乗りをしている若者をトンネル付近で見つけ追跡をした。


若者は警察車両から逃げるべくトンネルに。


ですが出口付近でトンネルの上に敷かれていた道から出てきて一時停止していた軽トラの前で突如激しく体勢を崩し、若者二人は道路に投げ出された。


追跡してきた警察官の目には、バイクがまるで軽トラに吸い込まれるように見えた。


運が悪いことに道に投げ出された若者二人は反対車線から来た大型トラックにはねられ
、1人は胸から上が、もう1人は胸から下が飛び、見るも無残な事故現場になったのだった。


当時は、警察車両に追跡されたバイクの若者が一時停止していた軽トラを避けようとして運転を誤ったものと見られていたのです。


一時停止をしていた軽トラのおじさんも「運転していた若者が自分の方へ向かってくるように見えた。一瞬、自分は一時停止しているのにバイクとぶつかるかと思った」と証言している。


ただ現場検証をした警察官は軽トラとバイクの距離がかなりあったことから、「いくら、焦って逃げていたとはいい、これだけの距離があって、軽トラを避ける必要があったのだろうか…」と疑問に思っていた。


悲惨な事故現場と化したトンネルの出口には、その後、当たり前のように亡くなった若者2人の霊がでると噂が立った。


そして、相変わらず出口付近での事故が続き、死んだ若者の霊が事故を招くのだと…


そうでなくても少ない交通量だったトンネルはさらに車通りが減る事になった。


交通量を分散化したいがために市税をかけて作ったトンネル。


このままではまずいとトンネル出口付近の調査を開始。


結果、トンネルの上から降りてきている道とトンネル出口の形とのバランスが良くないと結論付けます。


トンネルの出口が丸いため、トンネル上から降りてきた車両とトンネルからでてきた車両双方が脇道から車がいきなり出てきたような錯覚を感じてしまうのだとか…


あの、軽トラのおじさんの発言をまるで裏付けるかのような調査結果。


市は早速、丸かったトンネルの出口を四角にしました。


すると不思議なことにあれほど多発していた事故はぴたりと止まり、若者の霊の話も時の流れに埋もれていったのです。


車通りも少ないとは言い以前よりは増えました。


ですが…地元民は夜間、このトンネルを避ける人がいまだに多いのです。


出入り口でなんとなく人が遮っていったような気がする感覚を覚える人が多いからだと言われています。


かく言う私自身も、やむを得ず夜間このトンネルを通過した際、ライトに浮き出された膝から下が自分の車の前を小走りで横切っていくのを目撃しています。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter