怪文庫

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井戸の壁

小3の時だから、もう10年以上前の話。

 

片田舎に住んでたこともあって、ゲームとかよりも外で遊ぶことの方が多かった。

 

特に小1から仲の良かった俺、A、B、Cの四人は、リーダー格だったCの家に隣接してる結構深い林で、ほぼ毎日太陽が沈むまで遊んでた。

 

何年も遊んでたお陰で、林の構造は熟知してたつもりだった。

 

ある日、いつものごとく林に入って遊んでいると、急にAが居なくなった。

 

もしかしたら迷子かな?とよくあることだったので、来た道を戻りながら探した。

 

五分もしない内に、Cの家から500mくらいの所でAの横顔を見つけた。

 

俺「何しよーと?はよ行くばい」

 

A「んー、あんさ、こんな所に井戸やらあった?」

 

Aが指差した所に、確かに今まではなかったはずの井戸があった。

 

蓋が被せてあって、屋根?みたいなものから桶がぶら下がって、蓋の上に置いてあった。

 

A「な?なかったやろ?」

 

Aの言葉に少し恐怖を覚えたけど、さすがは子供、恐怖はすぐに興味に変わって、蓋を開けてみることにした。井戸はたぶん直径1mくらい。底が辛うじて見えるから、そんなに深くはなかった。

 

C「なぁ、懐中電灯もあるし、誰か降りてみらんや?」

 

Cの提案に賛成して、一番小柄だった俺が降りることになった。

 

桶の縄にぶら下がって降りていくと、意外と井戸が深いことに気付いた。

 

上から三人が覗いてるのが見えるけど、すごく小さく感じた。

 

井戸の底には落ち葉がいっぱい貯まっていて、何故かどれも乾燥してなくて真新しかった。

 

B「なんかあるー?」

 

手渡された懐中電灯の光で辺りを照らすけど、大したものは見つからなかった。

 

俺「んー、なんもないよ」

 

そう答えようと上を見上げた瞬間、只でさえ暗かった井戸の中が真っ暗になった。

 

数秒何が起こったか理解できなかったけど、すぐに蓋を閉められたと気付いた。

 

俺「ふざけんなよ!開けんや!」

 

下から一生懸命叫んでも、一向に開く気配がなかった。加えて運悪く、唯一の光源の懐中電灯の光が明滅し始めた。

 

泣きそうになりながら叫んでも、蓋は開かなかった。

 

そして遂に、懐中電灯の光が消えて真っ暗になった。

 

どうすることもできない状況で、狭い空間に真っ暗にされて閉じ込められた恐怖は想像に難しい。頭が変になりそうになりながらも叫び続けた。

 

すると、今まで消えていた懐中電灯が、ふと光を再び灯した。

 

真っ暗だった空間に光がついたことで一気に安堵して、三人が蓋を開けるのをゆっくり待つことにした。静かにしてればきっと三人は開けてくれるだろうと考えた。

 

壁に背を預けて座ると、目の前の壁が照らされた。さっきは気付かなかったけど、取っ手みたいなものが少し上の方にあった。

 

縄を少し登って取っ手を引っ張ると、隠し扉?みたいに井戸の壁が開いた。

 

恐怖というより、忍者みたいですげー!という興奮の方が大きかった。

 

すぐに縄を降りて穴を覗くと、一気に冷や汗が沸いた。

 

四畳くらいの大きさの穴の壁一面人形、人形、人形。種類も大きさもバラバラで、全部俺の方を向いていた。

 

恐怖で動けずに居ると、一番奥に何やら大きなものがあった。少しずつ光を当てて行くと、徐々にそれは姿を現し始めた。

 

ぼろぼろになったズボンを履いた足、真っ暗な手とシャツ、胸まである髪、そして顔を照らそうとした瞬間、髪の毛をいきなり捕まれて転けた。

 

心臓が飛び出るかと思うくらい跳ねて、泣き喚いた。

 

手当たり次第に手足をぶん回すと、何かにうつ伏せに押さえ付けられた。

 

手から離れた懐中電灯が、俺の胸に乗った人形を映したところで、俺の記憶はなくなった。

 

次に目を覚ましたのはCの家だった。目を覚まして一番に俺はCを殴った。

 

俺「バカ!くそ!死ね!」

 

文句言いながら殴っていると、Cのお父さんに止められた。

 

AもBもCも、みんな泣きながら俺に謝ってきた。事の顛末はこうだ。

 

俺が降りた後、案の定Cの提案で、ちょっとの間蓋を閉めることに。

 

すぐに開けるつもりだったけど、いざ開けようとすると、さっきは二人で軽々開いた蓋が持ち上がらない。三人がかりでもびくともしない。

 

何かやってしまったのかと思い、急遽Cがお父さんを呼びに戻った。

 

その間もAとBは、俺の叫び声を聞きながら開けようと必死だったけど開かなかった。

 

Cがお父さんを連れて来た頃には俺の声も消えて、AもBも疲れ果てていた。

 

開かないなら壊せ、ということで、大きなハンマーをC父が持って来ていて、蓋を叩き割った。底には俺の姿は見えなかった。

 

急いでC父が下に降りると、壁の穴の中で人形に取り囲まれて、胸に人形を抱き締めた俺が寝ていたらしい。

 

引っ張り上げるのに、Bのお父さんも加勢に来たと。

 

そして今、俺が目を覚ますまで、AもBもCも1日中ついていた。

 

つまり、俺は丸1日寝ていた。

 

C父「ずっとここに住んどるけど、あんな所に井戸やらなかったはずやけど」

 

C父が言ったこの一言に、恐怖が再び沸いた。

 

そのあと、井戸は埋められた。

 

お坊さんも来てたから、たぶんなんかあったんだと思う。

 

一番奥にあったのは、誰かの死体だったのかも知れない。今じゃもう分からない。

 

今でも井戸と人形には近付けない。マネキンとかでも冷や汗が出る。

 

著者/著作:旧2ch掲示板(出典)