怪文庫

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異世界へ行った女の子

日本のどこかの森の中に、異世界につながっている洋館があるという。

 

とある日本に住む女の子が、ある日行方不明になった。両親は必死に探したが、一か月、半年、一年がたっても女の子は見つからなかった。

 

周りは神隠しだなんだと騒いだが、一年と半年たったある日、女の子が街のはずれにある森で見つかったのだ。

 

女の子には傷一つなく、それどころか綺麗な服を着て楽しそうに帰ってきたのだ。

 

両親は女の子が無傷で元気そうに帰ってきたことに涙して喜んだが、それと同時になぜこんなきれいな格好でこんな楽しそうに帰ってきたのかと疑問だったので家に帰って事情を聴くことにした。

 

家に帰りみんなが座ったのを確認し父親が女の子に聞いた。

 

今までどこにいたのか、何をしていたのか、連絡はできなかったのかなど。すると女の子は、行方不明になった日からの出来事を話し出した。

 

女の子は行方不明になった日、友達と遊んで帰る途中にここら辺では絶対に見ないような綺麗なドレスを着た女の人を見たらしい。

 

女の子はその女の人が気になり追いかけたそうだ。すると女の人は街はずれの森に入っていった。気が付くと女の子は、かなり森の奥深くに来てしまっていた。

 

そこで女の子はようやく戻らなければいけないと気付いたが好奇心に負け女の人を見失わないように追いかけた。

 

そのまま追いかけていると、女の人はいつの間にか現れた大きな洋館へと入っていった。女の子も女の人を追いかけ大きな洋館へ入った。

 

するとそこには、女の子の住んでいる街と全然違う街があった。

 

そこには、レンガの建物に日本語ではない文字で書かれたお店があったり、日本では見ないような綺麗なドレスを着た女の人や、王子様のような服を着た男の人が歩いていた。

 

その光景に女の子は感動したが、そこまで来て改めて両親のことを思い出し帰らなければと思い咄嗟に後ろを振り向く。しかしそこには、もう扉はなくただ街があるだけだった。

 

女の子は帰れないとわかり不安になり泣きそうになったが、何とか泣かないように我慢していると、「お嬢ちゃん、こんなところでどうしたの?」と男の声で声をかけられた。

 

女の子は一瞬固まったが次の瞬間には振り向き、声をかけた男の顔を見た。

 

 

その顔を見た瞬間、女の子は固まった。

 

なぜなら、その男はサーカス団のような奇抜な格好をしたいたからだ。

 

男は固まってる女の子を気にすることもなく、「お嬢ちゃん、この世界の住人じゃないね」そういった。

 

女の子は意味が分からず、思わず「この世界の住人?」と聞き返したのである。

 

すると男はくすくすと笑いながら「行く当てがないならついておいで」そういって手を差し伸べられる。

 

女の子は戸惑った、この男に本当について行っていいのか。悩んだ女の子はこう聞いた「あなたと一緒に行けば私が元居た街に戻れるの?」と。

 

男はまたもくすくす笑いながら「僕についてくればきっと君の欲しいモノが見つかるよ、きっとね」。

 

男の言葉を聞いた女の子は危険かもしれないと思ったが、少しでも自分の街に戻れるのなら、両親の元へ戻れる可能性があるのならと男の手に自分の手を重ねた。

 

それから女の子は男についていき、たどり着いたのは町はずれにある小さな小屋だった。男は女の子を招き入れると、温かい飲み物を出して椅子に座らせる。

 

そこで女の子はようやく男について聞くと、男は自分の事を街はずれに住んでいる変わり者のしがない研究者だと言う。

 

それを聞いた女の子は、では何でも知っているのかと聞く。

 

男は「全てを知っているわけじゃない、でも君の疑問の回答にはそれなりに答えられると思う」。女の子は、では私はどうやったら帰られるのか教えてほしいといった。すると男は本当に帰りたいのかと聞いてきた。

 

それに対し女の子はどうしても帰りたい、両親のもとに帰りたいと男の目をまっすぐに見ていった。

 

男はまっすぐな目でそう答えた女の子をなぜか悲痛な目で見つめながらそうかと一言つぶやく。

 

女の子はなぜ男がそんな目をするのかわからなかったが、それでもなおどうやったら帰れるのかと聞く。

 

男は少しの沈黙の後話し出す。

 

「これは推測だけど、君からは不思議な力が感じられる。だから君の体内にあるその力をすべて使い果たせば自然に元居た場所に戻れるよ」そういった。

 

女の子は力を使い果たすにはどのくらいかかるのかと聞くが、どのくらいで力を使い果たすかはわからないと言う。

 

女の子はすぐに戻れるわけではないとわかり悲しくなったが、その顔を見た男はしばらくここにいるといいと提案した。いつかは戻れるのだからと。

 

そういった男の顔はいつの間にか笑顔に戻っていた。それを見た女の子はいま直ぐ帰れる手段がないから仕方ないと思い、その提案を受け入れる。

 

それから女の子は男と暮らし始めた。

 

男と暮らし始め一年がたとうとしていた頃、男は女の子に綺麗な服を渡した。もうすぐ帰れるかもしれないから記念にと。女の子は帰れるという言葉と綺麗な服に笑顔になった。

 

だがその時男がうっすらと不敵な笑み絵を浮かべているのを女の子は気づかなかった。それからしばらくして女の子の体が薄くなっていった。

 

もう戻れるのだとわかる。

 

女の子は男に感謝の言葉を言い、男は女の子にさらに感謝の言葉を言う。だんだんと意識が藤野木、気づいたら元の街はずれにいた。

 

女の子はゆっくりとそう両親に話した。両親は話し終わった女の子をますっぐに見て、嘘ではないと確信した。それから今まで会えなかった分を埋めるように三人で眠った。

 

しかし、その朝両親が目を覚ますと女の子の姿が服を残して消えていた。

 

両親はまたも必死に探したが、その後二度と女の子が返ってくることはなかった。さらにその後、両親は幾度もなく薄気味悪い男の声を聴いたという。

 

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