数十年前からホラー小説の中には、「人が誘拐されてゲームのプレイヤーとなる」系の話が登場し始めました。近年には漫画でこの題材を取り上げているものが増えて、珍しくもない状況です。
この手の話は作り話のように思われがちですが、実は実話であるとの都市伝説を耳にしました。
その話を教えてくれた友人は、どこかのIT系ベンチャー企業の社長の友人であり、私とはネトゲをするだけの関係です。
その社長は日本の名だたるVIPとも取引をしたり個人的な付き合いがあるそうなのですが。これはその社長さんの友人からちょっと聞いただけの、曖昧な話しです。
ある時社長が、とあるVIPからお誘いを受けたそうです。
場所は都内でも一級の繁華街にある雑居ビルで、1階には有名なクラブがあって、その日はそこで女性を交えて楽しんだそうです。
しばらくするとそのVIPの友人である別のVIPが、じゃああそこに行こうじゃないかという話が出てきました。あそこというのは場所は絶対に非公開になっているそうで、もしそれを公にすると何らかの理由で死体になってもおかしくないとのことでした。
それで社長が恐る恐るついていくと、窓がなくフロントガラスも見えない車の後部に乗せられ、数十分も走ったそうです。
どこに行くのかと聞いても、それは絶対に秘密で我々も知らないのだと言っていたそうです。しばらくすると車は停車して、降ろされると地下駐車場でした。ここからさらに今度は目隠しをされて、エレベーターに乗せられました。
エレベーターは数分間も下り続け、降りるとようやく目隠しが外されて、目的地に到着したのです。するとそこは顔にマスクをかぶった人間だらけで、誰が誰なのかわかりませんでした。ここにいるのは誰も彼も有名人か金持ちか関係者だけであるそうです。
社長本人もマスクを付けられて、地下空間を動き回ることになりました。
それでコレ以降は話すことは問題がないのかという内容でしたが、社長によると小説の中の話を再現した空間であるとのことで、小説や漫画でも「この空間をテーマにした作品はすでに出回り過ぎて今更隠しても仕方がない」そうです。
信じるか信じないかは人によるから問題ないという風な話だそうです。だから具体的な土地の名や、実名を出さなければokということで、ここから核心部分についても分かる範囲で話していきます。
広大な地下空間はどこまでも続いているようで、話によれば数キロ四方に渡る「秘密の娯楽空間」が作られているとのことです。東京の地下にこんな巨大空間があるなんて、だれも聞いたことはないかもしれません。
訪れた一角にはソファがずらりと並んだラウンジのような場所があり、大勢の人が寛いでいます。
そして目の前には大画面が幾つも並んでいるのですが、そこの1枚を見ると奇妙なコース図が描かれていて、本日の出場者みたいな名前がずらりと並んでいたそうです。
そして社長が驚いたのは、そこには日本の誰もが知っている犯罪者の名前があったというのです。しかも死刑になったはずのあの犯人の名前までも乗っていて、これは一体何なのか?としか思えなかったそうです。
そしてその日のゲームが始まったということなのですが、そのゲーム内容というのは人が実際に死んでしまうようなおぞましい内容が含まれていたといいます。
ゲームには何十種類も存在しており、すべてが人間競馬のようにして、勝者を予想する賭け事になり、莫大な金額が動いているということでした。ちなみに社長は気が引けて賭けには参加しなかったようです。
1つのゲームだけ見る権利が与えられた社長は、とある部屋に招かれました。
そこは真っ暗で真正面に大画面があり、ゲームの内容をつぶさに観賞できるところでした。
そのゲームは障害物レースで、参加者は至るところに仕掛けられた殺人障害物をクリアして、ゴールを目指すというものでした。
参加しているのは正体不明の人物や、死んだと言われているような犯罪者がいたりして、ゲームがスタートしました。中には罰ゲームとしてこのゲームに参加させられる人もいるのだとか。
そしてその恐ろしい内容については、ついに聞くことはできなかったそうです。
社長がしばしお酒を飲みながらのゲームを観賞しましたが、あまり気分はよくなかったそうです。
それはもちろん人が死ぬゲームを娯楽にしているのもありましたが、日本の地下でこんな世界が日常だということに拒否反応がでてしまったのだとか。
社長が帰宅する時になると、また目隠しの状態にされて、元きた道とは違ったルートで地上に戻り、どこをどう通ったかわからないまま、気がつくと東京のとある駅前にいたそうです。
それでこれにどっぷりと浸ると人間性すらも失いかねないということで、滅多なことでは近づかないのだといいます。
私はこの話を友人から聞いてみると、作り話の都市伝説だろとしか思わなかったのですが。しかし身元不明の死体が発見されたなんていうニュースを見るたびに、あのゲームの被害者なんだろうかとの思いが脳裏をよぎるようになっています。
著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter)