怪文庫

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片目占い

私の通う高校では、ある占いが流行っています。

 

それは、片目を隠して運命の相手を教えてもらうというもので、私たちはそれを「片目占い」と呼んでいます。

 

手順は簡単です。

 

①片目を片手で隠す

②もう片方の手を、手のひらを下向きにして開き、胸の前で真っ直ぐ伸ばす(何かを召喚するみたいなポーズ)

③「私の運命を教えてください」と唱える

 

以上の手順を踏むと、胸の前に差し出した手の小指からするすると赤い糸が伸びるのが見えるそうです。

 

それは、自分の運命の相手に繋がっていて、赤い糸が伸びた方向にその相手はいるという噂でした。

 

その片目占いをやろうと誘って来たのは、私の幼馴染て親友のTでした。

 

なんでも、Tは隣のクラスのMくんが気になっているらしく、占ってみたいとの事。

 

1人でやるのも寂しいからという理由で私を誘ったそうです。

 

それと、Tは私の好きな人を知っていたので、折角なら占っちゃいなよと言うのです。

 

占いの類いはあまり信じてはいませんでしたが、確かに少し興味はあったので、私はTと一緒に片目占いをする事にしました。

 

実行したのは、誰もいなくなった放課後の教室でした。

 

Tは、なんだか緊張するといって私に最初にやるよう促してきました。

 

仕方ないなあと言いながら、私は机に腰掛けるTの前で、片目を隠そうとします。その時、Tはこう言い始めました。

 

「そうそう、片目占いなんだけどさ。なんか怖い噂もあって。普通は赤い糸が見えるらしいじゃん?でも、黒い糸が見えたらやばいんだって。黒くて短い糸が見えたら、その人は数時間以内に死ぬらしいよ」

 

元々占い自体をあまり信用していなかった私は、はぁ、とだけ漏らしました。

 

所詮、女子高生の間で流行っている噂なのです。誰かが面白半分に話を作って盛ったに違いありません。

 

なにそれとか、Tと少し雑談を交わしてから、私は噂の通り手順を踏みました。

 

 

片目を隠し、もう片手を伸ばして、「私の運命を教えてください」と唱えます。

 

どうせ何も起きないだろう、と思っていた私は、目の前の光景を見て驚くことになりました。

 

なんと、小指から赤い糸がするすると伸びていくのが見えたのです。

 

「えっ何これ!」

 

私は思わず口に出してしまいました。Tは、嘘!糸見えるの!?と騒ぎ始めます。どうやら、糸が見えるのは私だけのようでした。

 

私から伸びた糸は、教室の窓を抜けて、グラウンドの方へと進んでいきます。

 

グラウンドでは、今サッカー部が活動をしているところでした。

 

私の好きな人もサッカー部で、今丁度糸の先にいるはずです。

 

残念ながら教室は3階なので、窓から垂れ下がっていった糸の先を目で追うことはできませんでした。

 

窓に駆け寄ろうと足を踏み出した途端、赤い糸も見えなくなってしまったので、占いは終了してしまいました。

 

「やっば!やっぱ噂は本当なんじゃん!」

 

私の話を聞いたTは、興奮したように言っていました。そして、続いて彼女も同じように占いを始めます。

 

例の言葉を唱えた彼女の小指を見てみますが、やはり本人ではないと何も見えないようで、Tの指先に異変を感じることはありませんでした。

 

「ねえ、どうだった?」

 

私はTに聞いてみますが、返事はありませんでした。ふとTの顔を見てみると、彼女は青ざめた顔で、自身の指先を見つめていました。

 

「ねえ、どうしたのって」

 

「やばいよ……」

 

そう言いながら、Tは私の方を見ます。

 

「糸、黒いよ……」

 

彼女は震える声で話します。私は、怯える彼女をなんとか宥め、教室を出て家まで帰ることにしました。

 

帰り道に話を聞くと、Tは片目占いをしたら自分の小指から真っ黒な糸が数cm伸び、ぷつんと切れた様子が見えたと言うのです。

 

大丈夫だよ、あんなの所詮噂なんだから、と私は言うのですが、Tは本気で信じているようで、帰り道もずっと泣いていました。

 

Tの事が心配だったのと、家も近所だったため、私はTを彼女の家まで送っていきましたが、Tは私が自分の家に帰ろうとすると待って、と言います。

 

「お願い、一緒にいて」

 

震える声でそう訴えるTを見ていると、なんだか可哀想な気がしてきました。

 

私とTの家は、徒歩1分程度の距離です。私は一旦荷物を家に置き、もう一度Tの家に戻ってくる事を約束しました。

 

家に着いて荷物を置いたところで、私は折角ならTの家に泊まって、朝まで一緒にいてあげようと考えつきました。

 

きっとTのお母さんも、急に泊まりに行ったとしても歓迎してくれるはずです。

 

私は泊まるための荷物を簡単にまとめ、もう一度Tの家に向かいました。

 

そして、インターホンを押そうとしたところで、玄関から慌てた様子のTのお母さんが飛び出してきました。

 

Tのお母さんは、私の姿を見るなり、泣き出してしまいました。

 

「どうしよう。Tが死んじゃった」

 

数分後、パトカーと救急車がTの家の前にやってきました。

 

Tのお母さんから話を聞くと、Tは自分の部屋で首を抑えて倒れていたそうです。慌てて介抱したそうですが、もう息はしていなかったとの事でした。

 

その後、病院でTの死亡が確認されました。

 

Tが何故死んでしまったのか、今でも理由は分かりません。何故私はあの時、ずっとTと一緒にいてあげなかったんだろうと、今でも後悔していますが、もうTはこの世にいません。

 

けれど、一つだけ確かな事は、あの日、Tは片目占いをして、黒い糸を見たという事。

 

それ以来、私は片目占いはやっていません。

 

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