これは私自身と私の出身地に纏わる話です。
私の出身地は関東地方のとある県で大手家電メーカーのお膝元と言われる市でした。
私の生家はその市内の団地にありました。
団地といっても大きなものではなく私の生家を含め13世帯が集まっている部分に"北◯団地"という名称がついていただけで普通の一軒家の集まりでした。
市内の大部分がそうでしたが大手家電メーカーの発展と共に人口が増え、住宅地も増えていったため私の住んでいた団地も家電メーカーに勤める私の親世代、同世代の人々が同時期に家を建て住み始めたエリアです。
そのため、私を含め子供達も同世代が多く、13世帯で私の上下4歳以内の子供が男12人、女3人と15人もいました。
ここからがやや不思議な話なのですが、ここ出身の私を含む12人の男子が今現在(私の年齢は現在50歳です)も全員が独身なのです。
生涯独身者が20数パーセントにも達すると言われている現在不思議ではないのかもしれませんが、言っても私達世代はひと昔前の世代なのにも関わらずです。
女の子3人(うち2人は私の姉)については3人共若くして結婚して子供もいます。
私自身面倒臭がりな所も多分にあることが要因でもあるとは思いますがそれでも結婚を考えたことは2度ほどありましたが、諸事情で立ち消えになり現在に至ります。
他の男の子達、幼馴染である彼等とは大人になってからは疎遠になってしまったため話はしていませんが、私の親から聞いた話では彼等も何故か結婚できない(しない)とのことでした。
私が30歳を過ぎた頃には家族内で「なんかこの団地に呪いでもあるんじゃないの?」と笑って話をしていたぐらいです。
それが約2年前、笑い事ではなくなる事実が出てきたのです。
先に話した私の生家があった団地はなぜその一角だけ団地として括られていたのかひとつ理由がありました。
その一角はある地主さんの私有地で私の生家含めその地主さんに月数千円という格安の借地代を払って住んでいたのです。
その地主さんの家は団地のすぐ横の一角にあり、地主宅敷地だけでも私達13世帯分より広い家でした。
その広い敷地のおよそ半分は茂みというか森のような場所で、私が子供の頃はよく幼馴染達と森に入り込んで遊んで地主家のお爺さんに見つかっては怒られたりしたものでした。
その森の中の一角に私達子供同士の間の暗黙の了解でなぜか絶対に近づかない場所がありました。
そこには古い井戸があったのです。
いわゆる石で円形に組んだ井戸口でその上には木の蓋がしてあり大きな石が載せられて開かないようになっていました。
まだその頃はホラー映画の貞子のような概念はなかったものの、子供心に蓋の下に何かあるのではと怖かったのかもしれません。
その地主さん宅が数年前に当主が亡くなり、遠方に住んでいた子供達の意向で手放すことになり宅地造成が始まったのです。
当然、森だった木々も切り倒され井戸も壊されることになりました。
その井戸の破却工事の際、井戸の底部からなんと女性の白骨死体が見つかったのです。
私は遠方に住んでいるため親から後々聞いたのですが、この件は地元の新聞にも載ったらしく警察の検視の結果、90年〜100年近く前に死亡したものらしいとのことでした。
ただ、それ以上調べようにも地主家の当代の方々は皆既に亡くなっており、子孫である子供達は寝耳に水だったようで詳細は霧の中になったとのことでした。
ひとつ気になったのは90年近く前というのは私の親世代がその団地に住み始めた数年前ということです。
この白骨死体が出た際、警察官も多数集まりひと騒ぎになったため団地に住む何人かが現場を見に行ったらしいのです。
その彼等の話ではビニールシートの上に並べられた白骨が遠目で見えたらしいのですが、しっかり白骨だったらしいのです。
というのは私も後から調べて分かったのですが土葬あるいは自然に白骨化した骨は数十年から100年程度で風化するのが普通らしいのです。
反対に火葬した後の白骨は表面が高温でセラミック化するため風化するまで数百年掛かることもあるらしいと。
わざわざ火葬した上で井戸の中に埋葬した可能性もあるかもしれませんが、自然白骨化したのだとしたら何故100年近く綺麗なままで残っていたのかはやや不可解です。
その白骨化した女性が誰なのか、何故死んだのか、何故井戸の中に入れられたのか、なぜ綺麗に白骨が残っていたのか、知る術はもはやありません。
そして私を含めた12人の男の未婚と関係があるのかももはや知る術はありません。
今現在私の生家には両親と姉夫婦、そして私にとって甥である姉の息子が住んでいます。
姉には私の姉弟構成と同じく2人の娘と一番下に息子がいます。
私の姪である娘2人は既に結婚して実家を出ていますが甥は30歳前なので不思議ではありませんがまだ独身です。
ここまで書いておいて何ですが私は呪いの類は信じていませんが甥は普通に結婚することを願わずにはいられません。
著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter)