怪文庫

怪文庫では、多数の怖い話や不思議な話を掲載致しております。また怪文庫では随時「怖い話」を募集致しております。洒落にならない怖い話や呪いや呪物に関する話など、背筋が凍るような物語をほぼ毎日更新致しております。すぐに読める短編、読みやすい長編が多数ございますのでお気軽にご覧ください。

怪文庫

気が付いたら家にいる

幼稚園から小学校三年生まで、何故か遊びに行くと記憶が飛ぶ場所がありました。

 

私がそれに気付いたのは幼稚園の時で、その場所と言うのが、園の近くの公園でした。

 

公園に遊びに行ったはずが、気が付いたら自宅に戻っているのです。

 

両親は私のこの可笑しな現象について気づいていないようでした。

 

「ママ、なんで今日は公園行かないの?」と聞くと、「あんた帰ってきたばかりじゃない」と困惑の表情をしていた事もありました。

 

普通に幼稚園の園内で過ごす場合は何も起きないのですが、近くの公園にお散歩に行く時は、いつも自宅にワープをしている状態になるのです。

 

子供だったので日付の感覚と時間の感覚があまりなかったこともあるのですが、その後も変なことは続きました。

 

年長さんになると、少し物心もついてくるので、なんでも親に質問するようになるのですが、その頃になると、なぜか母は公園に行くのを異様に嫌がっていました。

 

「あそこは絶対に行けない公園」と言い聞かせられていたので、しつこく何回も「なんで?」と聞いて怒らせたことがありました。

 

それでも私は1人でその公園に向かってしまいました。

 

すると途中の道で、身体が動かなくなったのです。

 

すごい冷や汗をかいていたことを今でも覚えています。

 

長そでを着ていたので、夏場ではなかったのですが、尋常じゃない汗でした。

 

気が付くと家の前に立っていました。

 

するとどこからか変な声がして、「家の周りを走っていたと言え」と言われて、母には「家の周りを散歩していた」と言いました。

 

あまりの汗の量に母はすぐにお風呂に入れてくれたのですが、公園に行こうとしたことは言えませんでした。

 

その後、小学校に入学して暫くしてからです。

 

友達が出来て互いに約束し、公園に行こうとしたのですが、友人が現れませんでした。

 

当時はスマホを持たせて貰える歳でもなかったし、連絡手段がなかったので仕方ないと帰ろうとしたのですが、鉄棒から手を放そうとした時に、友人の声がしました。

 

やっと来たと思ったら、やはり家の前に立っていました。

 

その時も尋常じゃない汗でしたが、後ろから友人が「また遊ぼうね」と自転車で帰って行きました。

 

遊んだ記憶が全くない状態でした。

 

その日もすぐにお風呂に入ったのですが、その頃からやっと自分が変な現象に巻き込まれていることに気が付いたのです。

 

その後、学校でも同じ現象になったのですが、その時は家の前ではなく、学校の保健室で座っていました。

 

軽い貧血だと言われたのですが、用務員の先生の声に聴き覚えがありました。

 

「家の周りを走っていたと言え」と幼稚園の頃に聞いた謎の声にそっくりだったのです。

 

「貧血なら心配ないですね」

 

と言い残してその時はすぐに出て行ってしまったのですが、その後、すぐに退職してしまったそうです。

 

記憶が曖昧なのですが、その後は記憶が飛ぶことも貧血になることも汗をかくこともなくなりました。

 

極度に汗をかかない体質なので、今でもあの時の違和感を覚えています。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter