怪文庫

怪文庫では、様々な怪談奇談を掲載致しております。

怪文庫

語られない事実

子供の頃に、関東圏の田舎街に住んでいました。


郊外から離れるとすぐに田んぼと畑だらけになってしまう様な場所でした。


近所の子供は大抵、暗くなるまで外で遊んでも平気なぐらい安全な場所でした。

 

それでも子供の頃は当たり前ですが、夕方5時までには帰宅しろと親に注意されていたのですが、町内会の大人だけの飲み会の集まりがある日だけは別でした。


その日だけは、子供が数人で1つの場所に集まって、親の帰りを待っていたのですが、
うちは親が参加していなかったので、自宅でいつも通りに過ごしていました。

 

別の家の子供を預かって欲しいと頼まれたこともあったのですが、すぐ近くの別の学区の学校の子供だらけでしたし、うちは貧乏な平屋の家なので、預かれないと断っていました。


母は頼まれて断れなかったらしく、町内会の大きな家に集められた子供たちの世話をするために、数時間だけ顔を出すことになったのですが、その日は父も仕事で帰宅が遅く、私と姉2人の3人で午後8時から11時ぐらいまでを過ごすことになりました。

 

うちは大変貧乏だったので、姉2人は「うちに泥棒なんて来るわけないし、見てきていいよ」と気にしていませんでした。

 

それに隣に住んでいる子供のいないおじさんとおばさんとその隣の独身のおじさんも
いましたし、私も一切気にしませんでした。

 

うちの地域はとても治安がよく、鍵を施錠しない人も多かったので、怖い話と言えば、幽霊とか心霊系の物ばかりでした。


うちの姉2人は、親がいないことを言い事に、宿題をサボって友人に長電話を始めました。


母がいると何かと、「相手に迷惑だから辞めなさい」と注意していたからです。


姉が通話しているのを横目に私はお絵かきをしていました。


当時私は小学生で、姉のようにケータイ電話はまだ買って貰えませんでした。

 

午後11時を回って、母か父が外で大声で話しているような声が聞こえました。

 

平屋なので自分の部屋がなかったので、姉2人もすぐにその声に反応しているようでした。


布団は自分たちで敷いて、寝床に入っていました。

 

母と父が喧嘩をしていると面倒なので、姉は溜息を吐いて、ケータイの画面を見ていました。


すると青ざめた顔で、もう1人の姉に画面を見せていました。


着信が母からの物で、外で騒いでいる人が母でもないことは明確になりました。


母にそのことを説明すると「鍵を掛けて、私が帰ってくるまで、大人しく待っていなさい」と焦っている様子でした。


いつもは施錠をしない玄関を、姉は急いで施錠しにいきました。


それから、私と姉2人と部屋の真ん中で固まって息をひそめていました。

 

そのあとも外から聞こえてくる女性と男性の声は止みませんでした。

 

あまりにも声がうるさいので、私は一度だけトイレに起きてしまったのですが、その時にはすりガラスから真っ赤なランプが照らされていました。


パトカーが出動してきたんだなと思いました。


テレビなどで酔っ払いは連行されていくものだと思っていたので、正直安心しました。


するといきなり「おい、帰ったぞ!!」と怒声のような声がして、お父さんだと何故かとても怖い感じがしました。


それから数分後、騒いでいた声は収まり、パトカーで連行されていったようでした。


その後、ほっとしてすっかり眠気に襲われてそのまま眠りにつきました。

 

その後、私は母に起こされて目が覚めました。

 

朝の8時を回っていたと思います。


姉2人は朝方に母から電話があり、目が覚めたのだそうです。


何事もなかったとほっとしていると、母がいきなり父が事故に合ったと騒いでいました。


母が泣きはらした目をしていました。

 

上京が把握できていませんでしたが、父が事故で入院していると思った私は「お父さん大丈夫なの?」と聞くと「死んだわよ」と冷たく言われました。


さっきまで泣いていたとは思えない程冷淡な声で怖くなりました。

 

昨日の件なのか、パトカーが家の前に着ていて、姉が「昨日、家の前で騒いでいた人のことなのですが」と尋ねると「お父さんが事故で亡くなったのに、そんなこと聞かないでくれる?」と言われました。


すると姉は「昨日、家の前で騒いでいたのは父でした」と強気に言い返すと「そんなわけないだろう。この家の前で人が亡くなったなんてことはない」と言われました。

 

その後、父の死体を確認するためにどこかに連れていかれたのですが、そこで父と最後のお別れをしました。


事故にあったとは思えないくらい綺麗な顔をしていて、正直それが怖かったです。


姉は顔が強張っていて、もう一人の姉は泣いていました。


葬式は密葬ということになっていましたが、火葬だけを済ませました。

 

私が小学校を卒業、下の姉が中学を卒業してから引っ越しました。

 

3ヶ月後でした。


近所の住民も何事があったかを悟ったかのように、1年以内に引っ越したそうです。

 

その後、一度だけ下の姉と、その日のことを話したのですが、上の姉がいる所ではその話はするなと強く言い聞かせられました。

 

現在、上の姉は自立しているのですが、滅多なことでは連絡してきません。


下の姉と私と母で、マンションに移り住んでいますが、それからは毎日家の鍵は施錠することにしています。


あの日、確かに家に帰ってきたのは父だったと思っていますし、事故の詳細などは子供だったこともあり一切聞かされていません。


下の姉は、早く家を出たいと言っていますが、母に家から通えるところで仕事を探せと言われています。


私も高校を卒業したら、自立をしたいと言っているのですが、止められています。


あれから、経済的にはかなり豊かになりましたが、私達姉妹はその件について一切母にも姉にも何も言っていません。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter