怪文庫

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人気な彼女

学生時代、クラスでもとても人気のある女子がいた。

 

容姿端麗で成績も優秀。スポーツ万能とまではいかないが、そこそこスポーツは出来るタイプの女の子であった。


性格も明るいタイプの人であった事から、言い寄る男子達も少なくなかった。誰がその子と付き合えるかという競争的な話題が出るほどでもあった。


もちろんそんな子がいれば、他の女子からの嫉妬を得るのは必然であった。


しかし、嫉妬はされるにしてもいじめられるとかはなく、他の女子からも評判は悪くなかった。


ある日、そんな彼女に告白をした男子がいた。彼は学校内でもイケメンとして有名で、彼女と付き合うには彼くらいしか釣り合う人はいないと言われていた。


もちろん誰もがその噂を聞きつけ、付き合ったのだと大騒ぎしていた。しかし、彼らが付き合う事はなく、彼は彼女にフラれてしまった。


そうなってくると既に年上のイケメン彼氏がいるだとか噂になっていた。

 

真相を確かめるべく、僕は仲の良い女子に頼み、彼女に彼氏がいるかどうかを探って欲しいと伝えた。

 

友達は快諾し、彼女に彼氏がいるかを直球で尋ねたそうだ。すると彼女はいるともいないとも言わず、話をはぐらかしたという。


結局その真実は闇の中へと消えて行く事となった。


高校3年生となり、部活動を引退するものが増えた。そうすると高校生達は受験の勉強と共にもう一つのブームへと乗っかる。


それが彼女や彼氏を作ろうという動きだ。


もちろん皆そのブームに乗り遅れまいと、至る所でカップルが出来てはなくなり、カップルが出来ては無くなった。


その中でも1年生や2年生の頃から長く付き合っているカップルもいた。


しかし、そのカップルたちもたちまち別れて行く事が増えたのである。

 

気が付けばカップルは徐々に減っていた。


新しいカップルが作られる事も少なくなった。

 

クラスや学年の中でもイケメンとある程度呼ばれる男子達やスポーツマンの男子達が皆告白をされてもオッケーせず、カップルにならないという現象が増えたからであった。

 

色恋沙汰は減り、皆が受験シーズンということで勉強に打ち込み始めていた。


自分は推薦組であったため、勉強は秋には終了していた。


同じ推薦組の仲間とカップルになりたいなという願望を話していると、そこそこイケメンの一人が勝ちほこったように話を始めた。


それは、あの学校でも人気の彼女とデートしてきたという内容であった。


もちろんその場にいた全員は大盛り上がり、そいつがついにあの牙城を崩すのかという話になった。


話を深堀していくと、少し違和感を感じた。

 

そいつはデートと言ったが、二人でファミレスで宿題をしながらご飯を食べただけとの事。


きっかけは分からない所があるといきなり学校で話しかけられたからだと言う。


そして意を決してそいつはチャンスだと思い告白までいきなりしてしまったらしい。

 

すると彼女の答えは意外な物であった。


「高校を卒業するまでは彼氏はダメだと親に言われているから、卒業したらね。」


と言われたとの事であった。

 

それから先、彼女と付き合えると思っているそいつは毎日のように連絡を取っているという。


今どきそんな家庭があるのかと少し疑問に思ったが、その時はあまり気にしなかった。


受験が全体的に終わり、皆が大学への夢を見ている中で学校でのある出来事に衝撃が走った。


それは彼女が自ら命を絶ったのだ。

 

 

皆から愛されていたというか人気があったので、まさかこんな事に卒業間際になるとは誰も考えていなかった。


もちろん男子も女子も皆が彼女の死を悲しんだ。


彼女の荷物を皆の意思で最後にまとめてお家に持って行きたいと伝え、クラスメイトのみんなで教材などをまとめていた。


僕はたまたま彼女のロッカーの隣だったので、彼女のロッカーの整理をした。


すると中には何もないが、一冊のノートが置いてあった。


ノートを何気ない気持ちで開けてみた。

 

中にはびっちりと文字が書いてあった。

 

日付も記載されており、その日その日の出来事をまとめていたような日記となっていた。


中身は壮絶な内容であった。

 

今まで告白をしてきた男子の名前と日付、そして顔や印象などが詳細に書いてあった。


さらにはその後その男子が付き合った女子の名前や印象等も点数付きで書いてあったのだ。


しかも書いてある内容の8割以上は悪口。中には付き合ってはいないが、男女の関係になった人間の評価点までつけてあったのだ。


そして自分に対する嫉妬による陰湿ないじめをしてきた人間もリストアップされていた。


その人間に告白をした男子や付き合った男子達の名前もリストアップしており、その男子の名前の隣にはチェックがつけられていた。


僕は気になり、そのノートを隠し、チェックのつけられていた男子に声をかけた。


そして彼女の事を尋ねると、彼女と付き合う事になっていると口をそろえて発言をした。


さらには彼女がきっかけで自分は前の彼女と別れたというやつもいた。


ようは自分の容姿などを使い、他の女に自分が上であると分からせるためだったのだろうと推測した。


ノートの最後にはメッセージが添えてあった。


”このノートを呼んだ方へ。このノートは私の遺書であり、私が受けた苦痛についても記載をした立派な証拠の一部となります。この内容に関しては私の父と母に同じものを渡しております。いつか開催される学校の同窓会。そこで私を思い出して頂けるようにこちらを皆様にお見せください。豊かな大学生活を。”

 

そう綺麗な字で書いてあった。

 

そして注意書きまで丁寧にされていた。

 

”尚、この内容を読んだ方は私の父と母をお尋ね下さい。報酬金をお渡しします。その代わり、同窓会への参加はくれぐれも漏れの無いようにお願い致します。”

 

彼女は皆から愛されていたが皆を心の底から恨んでいたようだ。

 

10年後、僕は大学を卒業し、社会人となっていた。


小さな企業で毎日汗水流して働いている。


そんな僕に一通の連絡が来た。


”同窓会のお誘い”


僕はノートを握りしめて会場向かおうと思う。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter