怪文庫

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兵庫県にある某墓地

これは私が10代後半のときに体験した話です。


私は当時、地元である兵庫県で生活していました。


当時は近くのレストランでフリーターとして毎日働いていました。仕事が終わるのはだいたい23時前後。仕事終われば、毎日のように友達と集まっていました。


集まっていたといっても、時間が遅いことや皆が実家ぐらいだったこともあり、コンビニの前でたむろしたり車でウロウロする程度でした。


ある日、いつものように仕事終わりに友達と集合した際、仲間の1人が「◯◯墓地にいこう」と言い出しました。


あの日は確か4人で集まっていましたが、皆何を疑うわけでもなく「いこう」となりました。


私が運転する軽自動車に3人の友達を乗せ、某墓地へと向かうことになりました。


移動中は私を含め4人ともが「本当に出たらどうする?」「写メ撮ろう!」「本当に写ったら雑誌社に売ろうか」などと、若さゆえの発想で盛り上がっていました。


そんなことを言いながら、いつもの集合場所から車を走らせること約30分、山間にある◯◯墓地の駐車場に到着しました。


道中はあれほどテンションが上がって盛り上がっていた4人でしたが、さすがに夜中の墓地を目の前にすると少々怖気付いた記憶があります。


実はこの◯◯墓地、私の実の祖母が眠っている場所でもあり、私にとっては何となく馴染み深い場所でもありました。


小さい頃から定期的にお墓参りには訪れていましたが、深夜に来ることはあの日が初めてでした。


お昼間に訪れる際は、多くの参拝者が訪れる墓地で、動物霊園が併設されている、多くの参拝者が訪れている、整備が行き届いており綺麗な場所であるという点から、恐怖の感情を抱いたことは一度もありませんでした。


しかし、先ほどもお伝えしましたが、日が沈んでから、もっと言えば深夜にあの場所を訪れるのはあの時が初めてでした。


駐車場背にして、左手には社務所、右手には動物霊園、右斜め奥にはお寺、正面の山の斜面に広大な墓地が広がっている、駐車場から山の斜面に向かってメインの道が一本通じており、その両翼に無数の墓地がそびえている、そんな墓地です。


もちろん、墓地があるような場所ですので、周りには山や畑などしかなく、民家やコンビニなどは一切ないような場所です。


あの日私たちが墓地に到着したのは、だいたい深夜1時ごろだったでしょうか。

 

もちろん他の参拝者なんているはずもなく、また私たちのような肝試しに来ている人間なども一切おらず、駐車場には私たち4人だけでした。


駐車場や墓地のメインの道には街灯がありますが、基本的には周囲は真っ暗。

 

月明かりがあるので、なんとかやっと見渡せる程度の明るさしかありませんでした。

 

 

そんな状況で「どうする?」「いく?」なんて話をしていた私たちですが、仲間の1人がずっと駐車場から墓地に続く一本道の先を、じっと目を細めて見つめていました。


様子が変だなと気づいた私は、彼の目線を追うように一本道の先を凝視しました。


すると、一本道のかなり先に白いモノが見えました。初めは何かの見間違いかなと思いましたが、よく見ると何か白い四角い箱のようなものが動いているように思えました。


初めに気づいた仲間、私がじっと凝視しているので残りの2人もそれに気づき、4人は一本道の先に釘付けになりました。


すると仲間の1人が「なんか動いていないか?」と言うので、私は更に集中してその白い箱を見つめていました。


「あれ?なんだかさっきより大きくなった気がする」と思ったその時でした。

 

仲間の1人が「あれこっちに近づいてきていない?」と言った瞬間、その白い箱は一気に大きくなる、つまりグッとこちらに近づいてきたのです。


さすがにビビった私たちは慌てて車に飛び乗り、墓地を離れることにしました。


初め、墓地に向かう車中では意気揚々としていた私たち4人でしたが、さすがにその時ばかりは強い恐怖を感じていました。


しかし、そこは10代後半の若者4人です。今考えると理解不能ですが、仲間の1人が「戻って確認しよう」と言い出したのです。

 

あの時ハンドルを握っていたのは私ですが、なぜか4人とも「そうだな。確認しに戻ろう」と謎の団結をしてしまい、来た道を戻ることにしました。


オドオドしながらも先ほど後にした駐車場に戻ってきました。4人は先ほどの一本道に釘付けです。


しかしながら、道にいたはずの謎の白い箱は消えていました。

 

安心と少しの期待はずれ感を感じつつ「何だったんだろうなさっきの白い箱」みたいな話をしていた時です。

 

1番初めに気づいたのは私でした。


例の一本道の向こうに、先ほどのように箱の形をしているモノではなく、白い縦長の何かがフラフラしているのが見えました。

 

私が気づいた直後、仲間の3人もその白い何かに気付いたようで、また4人ともが一本道にある白い縦長の何かに釘付けになりました。


ただ今回は、先ほどの箱のように「あれはなんだろうか?」なんてことを考える時間はありませんでした。


白い縦長の何かは明らかに"白い服を着た女"の姿でした。


しかも少しずつこちらに向かってきていました。


もう4人ともがビビり倒してしまい、すぐさまその場を離れました。

 

特に箱や白い女に襲われた、誰かが怪我をした、その後不幸に遭ったなどということはありませんが、あれ以降私は祖父の墓参りにいくことはなくなってしまいました。


箱や女の正体は今もなお分かりません。


ただ、あんな時間に女が一人でいること自体、異様な光景で、恐らく生身の人間ではないように思います。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter