私の通っていた小学校は、比較的新しい学校にもかかわらず、学校の七不思議がいくつもある学校でした。
私が在学中も体育館裏に新しいトイレの新築工事がありましたが、建物が完成する前にはすでに七不思議のうちの一つの怖い話が出来上がってしまうような学校でした。
ですので、あそこの小学校の七不思議はほとんどが作り話だと思いつつも、みんなでワイワイ話すネタとして役立っていました。
小学校6年生のころよく一緒にいたグループである日、
「これだけいくつも七不思議があるなら、一つぐらい本物が混じっていたりするんじゃない?」と話題になり、確かめてみようと、昼休みを使って検証してみることになりました。
といっても、まじめな人が集まったグループだったので、
「深夜12時に校庭の真ん中にしゃれこうべがぽつんと置かれている」とか、夜中じゃないと検証できないものは後回しにして、「上るときと下るときで階段の段数が違う」とかお手軽なものから始めることにしました。
ちなみに、この階段の段数が違うのは、「そのフロアの床を入れるか入れないかの違いだねぇ」とか小学生なりに謎を解き明かしたりして楽しかった覚えがあります。
そんなある日、「美術室の動く石膏像」の謎を解き明かそうという話になりました。
これは、私がたちが知っている話は、美術室の前がショーケースのようになっていて、そこに置いてある石膏像をずっと見ていると、その石膏像が動くというものでした。
貴重な昼休みを使って、私たちは階段の陰からその石膏像を何日も観察していました。
美術室は特別教室しかない階にあり、人気のない場所にありました。
見回りの先生に見つかると、「こんなところで何をしているんだ」と怒られるので、隠れながら観察していました。
また、七不思議を確かめていると先生に話すと強く止められるので、当時の私たちはきっと本当の不思議な話もあの中に入っているのだと強く確信しました。
そんな感じで貴重な昼休みを石膏像の観察に費やしていたある日、石膏像を見ていると「ぐわん」と頭が揺れたような感じがし、石膏像のヒビが伸びた感じがしました。
(貧血かな?)と思ったら、隣の友人が「ギャー」と声を出して走り出しました。
慌てて階段を降り、最後の3段ぐらいのところで転んでいました。
「どうしたの?」と私が聞くとその友人はフルフルと首を振るだけでした。
それから、その子が七不思議を検証しようの会をやめたいと言い出し、自然消滅してしまいました。
それからです。私が人のパーツを模した石膏像を目の端でとらえると、その石膏像がわずかに動くようになったのです。
美術室の前の石膏像だけじゃありません。美術館に展示してある石膏像や、進学先の中学校や高校でも、素知らぬ方を見ていた石膏像が、視界の端に入った途端私の方をじっと見ていたり、パーの形をしていた石膏像がグーの形になったり……。
今は石膏像があるような場所に行くことは減ったのですが、また石膏像が動くのではないかと美術館には行けません。
著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter)