怪文庫

怪文庫では都市伝説やオカルトをテーマにした様々な「体験談」を掲載致しております。聞いたことがない都市伝説、実話怪談、ヒトコワ話など、様々な怪談奇談を毎週更新致しております。すぐに読める短編、読みやすい長編が多数ございますのでお気軽にご覧ください。

怪文庫

罰が当たる滑り台

これは私の中学時代の友人であるS君が体験したお話です。


S君は友達何人かと、広場でボールの当てっこをして遊んでいました。そして彼が投げたボールは、一緒に遊んでいたK君に軽く当たったのです。


するとK君は、「うわあっ!あぁ…」と大袈裟に声を出して、その場に大の字に倒れて動かなくなってしまいます。


しかし友人たちは、そんなK君を心配するどころか、愉快そうに笑っています。実はK君は、いつもこんな風に演技をしていたのです。


でもS君は、そんなK君を面白がる気にはならないどころか、何となくモヤモヤします。


K君は可愛い顔をしている上に、いつも女の子のようなショートパンツを履いていて、それも凄く似合っていてとても目立ちます。


そんなただでさえ目立つK君なのに、更に失神したフリをして倒れるなんて、「どこまで注目を浴びたいんだよ」とS君は思っていました。

 

そこでS君は、K君を懲らしめてやろうと考えました。

 

実は近くの公園にヤドカリのような形をした大きな滑り台があり、なんとなく異世界に繋がっているような雰囲気さえあります。

 

そしてよく嘘をつく子が滑ると、罰が当たると噂になっていたんです。

 

それは、子供のしつけの為の、都市伝説かもしれません。

 

でもS君は、「Kの奴は恐がりだから、滑らせただけでも効果あるだろう」と考えました。

 

 

そんなある日、S君はK君を誘って一緒にその滑り台を滑ろうと言いました。


K君は、「えー。僕、こんな短いショーパン履いてるから、怪我しちゃうよ」なんてモジモジして嫌がります。


そんなK君はとても可愛いので、S君は余計にイライラして、半ば無理矢理滑らせました。


するとK君は、「うわあー!あー!」と、悲鳴を上げて滑っていきます。S君も後に続いて滑りました。


S君が滑りおえると、K君は滑り台の出口の前の地面にグッタリと倒れています。目は閉じて、口はポカンと半開きです。


「おい」とS君が、軽くK君の頬を叩いても、K君は起きません。


「マジか…罰が当たって、本当に失神しちゃったのか」とS君は思いました。


数分してやっと起きたK君にS君は、「どうしてたんだ?」と聞くと、K君は目をトロンとさせたまま、「分かんない…」と言います。


S君は、「これに懲りて、二度と失神したフリなんてするなよ」と言い残して、帰っていきました。

 

その夜のことです。S君に、友達から連絡が入りました。なんと、K君が行方不明だというのです。


S君は焦りました。「もしかしたらあの後、また具合が悪くなって、どこかで倒れてるかも…だとしたら俺のせいだ」と、S君は半べそをかきながら家を飛び出し、K君を探しに行きました。


とりあえず例の滑り台のところに行くと、なんとK君が倒れています。


S君はK君の元に駆けより、「しっかりしろ!俺が悪かった!」とK君を肩を激しく揺さぶります。


するとK君は目を開けて、「痛いよお」とペロッと舌を出します。

 

唖然としているS君のところに、さっき連絡してきた友達も笑いながら近づいてきました。


そう、全てはK君の演技でした。どうやら滑り台を滑ったあとの失神も、いつも通りお芝居だったようです。


S君は、「酷い…どれだけ心配したと思ってるんだ」と泣いてしまいました。


そして理解したのです。滑り台を滑って、罰が当たったのは自分の方だということを。


S君は自分の心に嘘をついていました。本当はK君が好きなのに、無理矢理嫌おうとしていたんです。


S君は、「自分の心に素直になろう」と思い、K君のことを私に全て告白すると決意しました。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter