怪文庫

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違和感の真実

私が体験したのは、私自身に起きた事ではなく友人の身に起きた事ですが、結果的に私も関わる事になった話です。


二年前の3月になりますが、私達は同じ高校出身で東京にある大学へ行く為に上京しました。


初めは同じ部屋を借りようかとも思いましたが、大学は同じでも学部が違いそれぞれに借りる事にしました。


元から引っ越しの時期も違い、私は友人より1週間は早く越したのです。

 

私の引っ越しには友人が手伝いに来てくれて、お願いしていた引っ越し業者の方も皆さん親切であっという間に終わりました。


荷物を片付けながら大学生生活を満喫する気持ちで一杯です。


私が引っ越ししてから1週間程経った後に友人が引っ越しすると言う事で私も手伝いに行きました。


引っ越し業者は私の時とは違う所でしたが丁寧なのは同じです。


親切過ぎるのではと感じた瞬間もありましたが、教育がしっかりしているんだと考える事にしました。

 

友人の引っ越しも済んで、互いの引っ越し祝いにコンビニで蕎麦を買ってきて二人で食べました。

 

 

友人の部屋を見渡すとぬいぐるみがたくさんあります。


趣味でもありましたが、少し寂しがり屋な友人は小さい頃からぬいぐるみに囲まれていたのです。


私の部屋とは違うなと感じていて、可愛らしい物はあまり置かないのが私の性格です。
友人からは殺風景だねと言われました。

 

4月になり大学も始まってお互いにキャンパスライフを楽しむ様になってから1ヶ月が経とうとしていた時です。


友人から相談したい事があるとLINEが来ました。


何だろうと思い、今日は用事もありませんでしたので待ち合わせして友人と帰る事にしたのです。


私は友人の部屋で話を聞こうとしましたが、友人が私の部屋で話したいと言ってきたのでそうしました。


私は不意に友人の部屋では何故駄目なのか頭を過りました。

 

私の部屋に着くと、飲み物を出して友人の話を聞く事にしました。


友人が言うには、最近になってぬいぐるみの位置が若干ずれていたりしていて、初めは朝の忙しさから触れてしまったのだろうと考えていたそうです。


それでもおかしな時があり、何か夜になると不安になるようで眠れない日もあったとの事で友人は少し疲れ気味になっている雰囲気もありました。


元から元気一杯な友人にしては大人しい感じがしていて、じっくり話す事が最近はなく、いつもLINEのやり取りだけでしたので余計です。

 

友人が一番気になっている事は霊的な物が関係しているではとの事でした。


普段ならばその様な事は思わない友人でしたので理由を聞くとぬいぐるみには何か宿る事があったり寄せ付けると同学部の人から言われたからだそうです。


どんな部屋に住んでいるかの話題になった時にぬいぐるみがたくさんあるよと言った事から話になったようで、言う人も大概だなと感じました。

 

確かに人形の物にはその様な力はありますが、ところ構わずではありません。


でなければおもちゃ屋は大変な事になります。


この様な事を私が何故なら知っているのか、友人が私に相談したのには訳があります。


私の実家は神社で父親が神主をしています。


大きな所ではありませんが、先祖代々の家系です。


その様な事から昔から何かと聞かされていましたし、不用意に関わってはいけない事も知っていました。

 

私は小さい頃から見えはしませんが、何かしら感じる物があり何度か経験しています。


友人はその事を知っていましたので、私に部屋を見てくれないかと言う相談もされたのです。


私は一度父親に相談してから返答するからと友人に伝えて、今日は私の部屋に友人は泊まる事にして遅くまで語りました。

 

翌日に私は父親に連絡して友人の部屋の事を伝えました。


父親からは万が一の事があるからと駄目と言われましたが、友人は私の実家にも遊びに来たこともあって私はお願いしました。


父親は渋々な口調で了承してくれて、父親直々に見てくれる事になったのです。


私は自分で済ませようとしましたが霊的ならば私では無理だからと力ある父親の出番と言う事です。


この事を友人に伝えると驚きと感謝で涙混じり状態でお礼を言われました。

 

早速と言う事で、その日の夕方には私の父親が東京に来ていて私達と合流しました。


実家は車で二時間くらいですので遠くはありません。


父親の車に乗って友人の部屋があるアパートへと向かいます。


次第に近づいていく中で、感じる物があれば何となくわかるですがまだありませんでした。


それは友人のアパートの前に着いても同じで、霊的な物があれば父親はもちろんですが私も感じます。


ですが、私と父親は特に何も感じなく霊的な物はありませんでした。


余程弱いのか、もういなくなっているのかわかりませんが兎に角友人の部屋へ行く事にしたのです。

 

部屋に入って父親が一通り見渡して色々と調べましたが全くといって良い程に霊の痕跡がなかったのです。


私も嫌な感じはしませんでしたし、以前に来た時と変わらないぬいぐるみ一杯の部屋でした。


友人の部屋が事故物件でもありませんし、近くに墓地もありません。


友人にその事を伝えると、初めは安心した表情を見せましたが霊ではないとすると別の怖さがある事を感じ取り不安な顔へと直ぐに変わりました。

 

私の父親が一度しっかりと調べた方が良いと言われて、父親の知り合いに専門家がいるからとお願いしてもらったのです。


専門家の人が来る時は私も立ち会って友人一人にしませんでした。


友人の勘違いならば一件落着ですが、そうでなければ怖さへと変わります。


専門家の人が友人の部屋へと来て見た事もない機械を出して調べて行きます。


するとぬいぐるみがたくさんある場所へと近づくと機械が反応します。


専門家の人が言うには盗聴器があるとの事でした。


私達は呆然として見ているだけでしたし驚きです。


電波を飛ばすタイプで近くに来ないと聞けない物だそうです。

 

ぬいぐるみは友人が家から持ってきた物ですが、盗聴器はごく最近入れられた物との事で新しかったのです。


直ぐに警察へと連絡して色々と聞かれたりしましたし、パトロールもしてくれるとの事でした。


誰かわからなければどうする事も出来ないと言われて、警察も頼りないなと感じました。

 

友人はもう嫌な思いはしたくないからと引っ越ししてから2ヶ月しか住んでいないアパートを出ていく事にしました。


友人の親御さんも心配していて、友人の親御さんから私に一緒に住んでくれないかと言われました。


私の住んでる部屋も広くありませんでしたが二人でも大丈夫なくらいはありました。


ぬいぐるみの数が多かったので半分に減らして、残りは友人の実家へ送りました。

 

友人が私の部屋へ越してから二週間程経った頃に友人の元へ警察から連絡があり、不審な者を逮捕して色々と聞いた所、友人の部屋にも侵入した事があると聞かされました。


私達は捕まった人がどんな人なのかと直接警察に行って聞くことにしました。


担当の人から聞いた時、鳥肌が立ち恐怖で一杯になりました。


逮捕されたのは友人が頼んだ引っ越し業者の人だったのです。


その人は仕事で気になる女性がいると、合鍵を作り侵入すると言う事だそうで盗聴器を仕掛けては聴くのが快楽だというとんでもない男だったのです。

 

今回は霊的な物ではなく人の手による気持ち悪さに繋がりましたが、友人は帰り際にまだ霊的な物の方がよかったと話していました。


入られた時期から1週間程は友人の私生活を聞かれていのですから尚更です。


信頼して任せている引っ越し業者の人が入るなどと想像もした事がありん。


これを聞いてから、次回引っ越す時は誰を信じれば良いのか、信頼出来る引っ越し業者はどの様に調べたら良いのかと不安だけが残りました。


あれから二年前が経って私達は大学三年生です。


今も引っ越しせず、当時と同じ私の部屋で友人と住んでいます。


人の怖さはトラウマレベルだと改めて実感しました。

 

著者/著作:怪文庫【公式】(Twitter