繋がるバス停

私の実家はすごい田舎にあるんだけど、そんな田舎の学校でも語り継がれる七不思議があるの。

 

その七不思議のひとつの話で学校の近くにあるバス停の話があるんだよね。

 

『天候が大荒れの日に、とある時間にそのバス停から出るバスに乗り過ごすと、来るはずのないバスがやってくる』

 

田舎だからバスなんか乗る人も少ないし、1時間に1本程度しか来ないから、都会と違って臨時便なんて絶対に来るはずが無いんだけど、誰も乗っていないバスが来るらしい。

 

そのバスに乗ると、なんと、死んだ人に会えるって言われているの。

 

まぁ最後のオチで大荒れの日にバスを乗り過ごすと危ないから気をつけろっていう、学生に対する注意喚起で、この話はより興味を持たせるために作られた話だって言われるんだけど、この七不思議について、私は大人になった今でも忘れられない体験をしたんだ。

 

二学期の終業式。

 

その日はずっと雪が降っていて、夕方には風も強くなってまさしく大荒れと言っていい天気だった。

 

私は生徒会の役員だったんだけど、資料を作ってたら珍しく家から連絡が来たんだ。

 

おばあちゃんが倒れて予断を許さない状況だって。

 

両親が仕事で遅く帰ってくる家庭の子供だった私は、おばあちゃんによく面倒を見てもらっていた。

 

優しい言葉で色々なことを教えてくれたおばあちゃん。

 

そんなおばあちゃんが倒れたって連絡が来たときは、気が気じゃなかった。

 

時間を見ると学校近くのバス停にバスがくる時刻の三分前。

 

今から走ればバスの時間に間に合うかもと思いながら急いでバス停に向かったんだけど、結局バスには間に合わなかった。

 

走り去るバスの光景をぼんやりと見つめていたんだけど、大荒れのはずの天気はその時だけは風がピタッとやんで雪だけが深々と降り続け、なんだか変に不気味だった。

 

このまま一人で待っていてもしょうがないので、学校に戻って時間まで時間をつぶそうと思ったその時、バスが来たの。

 

さっき目の前で通り過ぎて行ったバスとは違うバス。

 

行先も確認して、目的地はあっていたから早く病院に行きたい一心でバスに飛び乗ったんだ。

 

バスには誰も乗っていなかった。

 

さっき走り去っていったバスのすぐ直後のバスだったから、みんなそっちのバスに乗っているんだろうと思って気にならなかった。

 

おばあちゃんに会いたい気持ちだけが募った私には、七不思議の話なんて頭の中には全くなく、ひとまず病院に迎える一抹の安心感と寒かった外の気温と温かいバスの温度が相まって、私はそのまま眠ってしまったんだ。

 

なぜか感じる心地よい安心感とともに。

 

隣に人が座った感じで目が覚めて周囲を見渡すと、バスは乗客でいっぱいだった。

 

外を見ると、大荒れの天気は落ち着いて、夕焼けがきれいに見えるくらい落ち着いた天気に変わっていた。

 

どのくらい眠っていたんだろうとぼんやりした頭を覚ましつつ、隣に座っていた人を横目で見てみると、目があってびっくりした。

 

その人は私のおばあちゃんだったんだ。

 

けど、そこで私はある違和感に気が付いた。

 

おばあちゃんは倒れて病院に運ばれていて、確か予断を許さないといわれていたはずだった。

 

じゃあこの人は・・・?

 

おばあちゃんは笑顔で私を見つめていた。

 

一瞬私はまだ夢を見ているのかと思ったけれど、その笑顔は小さな頃から何一つ変わらない、私を安心させてくれる笑顔のおばあちゃんだった。

 

間違えるわけがない。

 

そんなおばあちゃんは私に何かを伝えようとしているように思えた。

 

おばあちゃんはどこに行くのかと聞いてみたら、おじいちゃんのところへ行くと。

 

そして、急にいなくなって申し訳ないけれど、家族のみんなに私は幸せだったと伝えてほしいと伝言を頼まれた。

 

このことを言われてはっきりと分かった。

 

おばあちゃんは亡くなったんだ。

 

大好きなおばあちゃん。

 

なぜか行かないでという言葉は出てこなかった。

 

代わりに出てきた言葉はただ一言。

 

ありがとう。

 

その言葉を聞いたおばあちゃんは、私のことを優しく抱きしめてくれた。

 

そして、私の頭をそっと撫でながら次のバス停で降りなさいと言ってくれた。

 

最後に会えたのがあなたで本当に良かったと言ってくれた。

 

そして、もう一言。

 

あなたがこのまま一緒に来るにはまだ早いから頑張って生きなさい。

 

気が付けば、病院近くのバス停で見知らぬ女性に声をかけられていて、私の体はなぜか地面に倒れていた。

 

女性曰く、私がバスを降りたとたんに糸が切れたように崩れ落ちたと。

 

スマホを見てみると着信とおばあちゃんが亡くなったとのメッセージ。

 

倒れてから目が覚めるまでは一分ほどのことだったようで、病院に先生を呼びに行ってくれた人もいたようだ。

 

ほどなくして、病院から先生と呼びに行ってくれた人が出てきたので、体は無事であることを伝え、気を使ってくれてありがとうございますとお礼の言葉を述べ、そのまま病院に向かっていった。

 

病院に入ると、霊安室に案内され、そこには両親と眠っているように見えるおばあちゃん。

 

さっき会ったおばあちゃんと違うのは、言葉を交わすことがもうできないこと。

 

けれど、おばあちゃんが笑顔で旅立っていったことを知っていた自分は、悲しさというのは全くなかった。

 

学生の注意喚起のために作られた、死んだ人に会えるというバスは、死後の世界に向かうバスだったんだ。

 

なぜ、私が乗れたのかはわからないけれど、大好きだったおばあちゃんに最後のお別れを面と向かってできた私は幸せだったと思う。

 

これが私が体験した七不思議のひとつ。

 

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