千里眼の祠

これは私の友人から聞いた20年前から現在にかけてのお話です。

 

わかりやすいようにこれから私が友人の立場になって聞いたお話をお伝えしようと思います。

 

二十年前。

 

私は趣味で車やバイク、自転車に乗り田舎の自然を散策して野営することが生きがいである。

 

ほとんどが気まぐれ思い付きによる放浪だがインターネットでみた情報をもとに活動することもある。

 

夏の暑い日にネットで検索してみるとあるブログの日記に廃れた田舎の部落に千里眼をもたらす祠があると記載されていた。

 

昔の人々の信仰の対象でいまだに数少ない部落の民から崇められているようだ。

 

家からその部落までそう遠くないので今回はそこへ行ってお参りして野営してこようと計画をめずらしくたてた。

 

当日の移動手段もいつもならバイクか自転車メインだが何故か車を選んだ。

 

プリントアウトした地図を度々見返してようやくその部落へ到着。

 

かなり人口が減っているようでほぼ人が見当たらない。

 

廃れた空き家が目立つ。

 

なんとか第一部落民を発見して祠の情報を聞く。

 

部落から少し山に向かった麓にあると聞き感謝を伝えてわかれた。

 

しかし、ちょっと違和感を感じる。

 

だいたい自分が放浪をして特に山の部落となるとよそ者意識で意味嫌われがちだ。

 

ただその後に出会った人たち含め、ここの部落の人はとても親切で優しく拒絶感など一切ないのだ。

 

違和感と感謝をしつつ祠へ向かう。

 

祠を発見することはできたが人手が足りず管理が行われていないのか藪に囲まれていた。

 

たくさんの蚊に襲われながらも、なんとかお参りができた。

 

気が付けば夕方が近づいてきて、いつもだったら野営ポイントにテントを張る頃だ。

 

しかし、その日は何故か気がのらずそのまま家に車に乗ってかえる事にしたのだ。

 

変な感覚的なことなのだが、どうも部落を出発してから後部座席や後ろの道から誰かがじっと見ている気配を感じている・・・

 

そんなことを感じながら無事帰宅してシャワーを浴び扇風機を回しビールとつまみを食べながら晩酌。

 

疲れもあってかその日は眠気が来るのが早かった。

 

酔いも回ったせいもあってか、面倒でそのまま電気を消してテーブルの下で雑魚寝した。

 

初めての体験だった。

 

現実とも夢ともとれる鮮明な夢の狭間を見ているような感覚に陥った。

 

夢の中では、これは普段自分が居る街に違いないのだが妙に廃れた建物と新しい建物が建っている。

 

こんな街の作りだったか・・・?

 

待ちゆく人も心なしか高齢者多く目につく・・・

 

もっと若い世代がいるはずなのにどこへいった・・・?

 

街をうろついて自宅へ帰ると見覚えがあるようなないような高齢な女性が居た。

ゾッとした・・・

 

間違いなくそれは自分の母親であるのだ・・・たぶん・・

 

しかし実の母親よりかなり年を取っている・・・

 

そして私に向かって見ている顔は間違いない母である!

 

母がそれからおいでおいでと手を振ると不意に私の意識が飛んだ・・・

 

リアルで鮮明で現実とどこか違う世界の夢を見ていた。

 

当時、その事を友人に話をしたら鼻で笑われてしまった。

 

なんとも情けない・・・

 

それから20年たった現在。

 

その頃の友人が思い出したようにその時の夢のことを聞いてきた。

 

その瞬間私はハッとすべてが走馬灯のように駆け抜けた。

 

一瞬にして当時の夢が現在の世界とマッチングして夢の風景や実母との姿が全て一致するのだ。

 

私はいてもたってもいられなくなり、数日後の休みにあの千里眼の部落へまた行くことにした。

 

しかし、プリントアウトした地図なんて当然このごちゃごちゃした家で見つけられない。インターネットでしばらく調べても当時のブログ日記はどこにも見当たらない。

 

しかたがないので記憶を辿りにその部落へ車で向かってみた。

 

うん、間違いないこっちの方角のこのあたりの部落だ。途中の道までは記憶がリンクして革新がもてた。

 

しかし、衝撃的なことにその先はダムが開発されて新しい貯水池となっていた。

 

千里眼の祠があった部落は今ではもうこの湖の下なんだろうか・・・

 

ノスタルジックと悔しい後戻りができない気持ちにかられながら暫くそこでボウっとしていた。本当は良くないのだがちょっとだけストロングゼロを取り出し飲んでいた。

 

すると後ろから軽トラックが一台着て窓ガラスを開けて声をかけてきた。

 

「どうなさったんですか?」

 

私は答えようとした瞬間ドキッと身が固まってしまった。

 

そう声をかけてくれたのは二十年前に祠の場所を教えてくれた第一部落民にそのままそっくりな若者だったからだ。

 

私はなんと答えて言いかわからず、「大丈夫です。すいません・・・」と謝った・・・。

 

そして、なぜかその場で涙が溢れ号泣して帰った。

 

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